第2061冊目 介護現場のクレーム対応の基本がわかる本 濱川 博招 (著), 島川 久美子 (著)


介護現場のクレーム対応の基本がわかる本 (New Health Care Management)

介護現場のクレーム対応の基本がわかる本 (New Health Care Management)

  • なぜ、「身だしなみ」をきちんとすると人間関係づくりに良い効果が得られるのか


前にも紹介しましたが、サービス業を「人間処理業」を位置づける加藤秀俊氏はその著『人間関係』の中で、服装について次のように述べています。


「人間処理業」はほとんど例外なしに、服装にこまかい気遣いをしているのが一つの特徴なのである。そこでは、外見上の風采でひとまず、大ざっぱな直感的判断をする以外に他人を類別する方法がないから、とにかく、いちおうの身なり、というのが必要になってくるのだ。


つまり、人間関係が始まる最初の関門は第一印象なのです。その関門を通過しなければ次の確認、信頼のステップに進むことができません。


だからこそ、身だしなみが重要なポイントになります。


第一印象はすべてではありませんが、人間関係構築の第一段階なのです。


ところが、多くの介護スタッフは自分の身だしなみについては、あまり気にかけていないようです。


業務の効率性という美名の下に、ジャージの上下を着て、髪はボサボサ、サンダル履き、ひげ面、茶髪で利用者に接していることが多くはありませんか?


そうした格好を見て、利用者やそのご家族はその介護スタッフに、そしてそこの介護施設・事業所にどのようなイメージを抱くのでしょうか?


「医師」や「看護師」に対するほど明確なイメージは持っていないと思います。しかし、自分の老後を託す介護スタッフがだらしない態度で、言葉づかいも乱雑となると、そんな人に自分の残りの人生をこの人に託すんだと思うと悲しくなってしまいます。


だからといって、利用者は簡単に施設から出るわけにもいかず、結局は我慢して介護を受けざるを得ません。いったん心を閉ざした利用者の心を開く努力は大変です。


第一印象を良くする効用は、利用者が入園した以降の利用者と介護スタッフの関係を決定づける最も大切な瞬間になります。


身だしなみを良くする効果は、他にもあります。よく介護現場で働く人たちからは「自分たちの社会的地位が低い。もっと評価されるべき仕事をしている」という声を聞きます。非常に重要で大切な仕事をしている介護スタッフの声が聞こえてきます。


だらしない服装は、残念ながらその人の品格を下げてしまいます。そして、勝因全体がだらしないとその施設そのものの品位もまた疑われます。


施設の品格に疑問を持たれるということは、業界全体の評判に影響します。つまり、業界の評価もまた下がってくるのです。


だらしない服装は自分たちの社会的地位を下げているといっても過言ではありません。身だしなみはプロの介護スタッフとして自覚を持つ第一歩です。

  • 言葉づかいひとつで利用者の満足度は違ってくる。満足度が高ければ信頼が生まれる


人と人が触れ合って仕事を進めていく仕事の多くの部分は、言葉で伝えなければなりません。


乱雑な言葉づかいをしていれば、たとえ質の高い介護サービスを提供できていたとしても適正な評価を得ることはできません。


たとえば入浴介助の業務で、「体を流しますね」と優しく言うのと、「お湯をかけるよ」とぶっきらぼうに言うのとでは、介護を受ける利用者の満足度はまったく違ってきます。


満足度が高いほうが信頼感が生まれ、コミュニケーションも円滑になることは言うまでもありません。


別に敬語を意識することはないと思いますが、少なくとも丁寧語を使い、ため口や幼児言葉を使うことはやめましょう。


またこんな声もあります。


「敬語で話すと利用者との関係が親密になれず、満足な介護ができない」


確かに介護現場だけでなく、医療現場でもそのような声を聞くことがあります。


しかし、敬語のクレームの多くは、受け取る側つまり、利用者やご家族からのものだということです。


つまり、利用者再度の人の中で多くの人が、敬語は使われて当たり前と思っているのです。


中には「私に敬語は使わないでいいわ」と言う利用者がいると思います。もちろん利用者一人ひとりのご希望に沿うことが原則ですが、しゃべる声は他の利用者またはご家族にも届きます。


自分の親に若い介護スタッフがため口を話しているのを聞いて、家族はどう思うでしょうか。


親しみがあっていい、と思う家族だけでは無いはずです。「うちの親は軽んじられているのではないか」と考える家族もいるはずです。


その時他の人がどのように感じるかを考えれば、その人に対しても事情を説明して敬語を使ったほうが良いと思います。