第3996冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

実績が成功を約束しないのは、CEOなどの高い地位だけではないし、またアメリカだけの現象でもない。インドのある大企業でマーケティング担当役員だった女性は、自分をトップリーダーとして認定してほしいとCEOにアピールした。認定されれば報酬は平の役員より三〇%アップするし、昇格の可能性も高くなる。この女性は何の根拠もなしに厚かましい要求をしたわけではなく、売れ行き不振に陥ったブランドを立て直し、さらにインドの有力な広告コンテストで賞をとったばかりだった。だがこのはなばなしい成果にもかかわらず、要求は却下された。

 

実績が昇進(どころか地位の維持)を約束してくれないのと同様、お粗末な成績が解雇や左遷に直結するわけでもない。著名なコンサルティング会社LECGのCEOマイケル・ジェフリーは、在任期間を通じて、赤字続きだったにもかかわらず、まる三年にわたってCEOの座を維持した。最終的には自ら辞任を申し出たのだが、最後の二年間で株価は八〇%も下がっている。この下げ幅は同業他社よりはるかに大きい。ジェフリーは会長と親交があり、取締役会を仕切る手腕に長け、かつ会社が抱える問題を前任者(創業者だる)になすりつけることによって、三年間とは言えともかく生き延びたのだった。また、ある医療機器メーカーのCEOは、株価は横ばい、売り上げは伸びても利益は増えないという状況で、一〇年近くトップの座に居座った。幹部クラスがごっそり会社を辞めていき、後任が見つからない有様だったにもかかわらず、このCEOの報酬は上がり続け、地位はびくともしない。会長をはじめ取締役会と太いパイプを持っていたおかげと考えらえる。以上の例から言えるのは、上司がご満悦であれば、仕事の出来不出来はさほど問題ではないということである。逆に上司を不快にさせたら、いくら実績があっても首は危うい。

 

立派な業績を上げればご機嫌取りなどしなくても自ずと上に行けると考えるのは、多くの人が犯しがちな重大な思い違いの一つである。その結果チャンスをみすみす逃し、賢いキャリア形成に失敗することになる。もしあなたが上をめざすなら、仕事さえできればいいのだろうという考えは捨てた方がいい。この点をよくわかっていれば、この事実をうまく生かせるようになる。