第2060冊目 スタッフに辞める! と言わせない介護現場のマネジメント 田中 元 (著)


スタッフに辞める! と言わせない介護現場のマネジメント

スタッフに辞める! と言わせない介護現場のマネジメント


都内で働くケアマネジャーのHさんは、利用者情報のセキュリティ管理について、事業所から細かい指導を受けています。例えば、?個人の携帯電話で利用者と連絡を取らない、?会社の携帯電話であってもナンバー登録はせず、電話番号は手帳に記す、?その手帳に記す電話番号を一つひとつずらすなど暗号化する、?利用者データが入ったUSBなどは絶対に家に持ち帰らない――などという細かい規定があります。


こうしたセキュリティ管理は、秘密保持の実効性を上げることもさることながら、厳しい規定を課すことで、スタッフの「リスク管理」の意識を底上げする目的もあります。施設長によれば、「最初は現場から厳しすぎるという反発もあったが、実践していくなかで、利用者に対する接遇や倫理への意識が高まった様子がうかがえる」といいます。日々の業務風土を整えていくことが、大きな事故防ぐうえでは基本となっているのです。

  • スタッフの何気ない言動にも、大きな虐待リスクが潜る


あらゆる業界を通じて、リスク管理のイメージとして「ハインリッヒの法則」がよく取り上げられます。図に示したように、一件の重大な事故もしくはトラブルの背景には、軽微な事故やヒヤリハット事例が一定数蓄積しているという法則です。


都内のS訪問介護事業所では、リスクマネジメント研修において、この図を取り上げつつ「小さなトラブルにつながる」ことを教えています。そのうえで、現場からのヒヤリやっと報告などをうながそうという意図があります。


先のセキュリティ規定についても、現場でついおろそかになってしまう細かい点を一つひとつ規定していくなかで、重大なリスクの発生を防ごうという構図があります。


スタッフの虐待リスクなどを防ぐうえでも同様で、スタッフの何気ない言動をチェックせずに見過ごしてしまうと、それが一定数積み重なったときに、虐待事件などが発生する確率が一気に高まります。


アメリカの技師・ハインリッヒが、もともと労働災害の発生を分析するなかで導き出した法則。工場の製造ライン運営や、航空機の事故防止など、あらゆる現場において基本的な法則として採用されている。