第3997冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

 

実績と昇進は関係ない!


実績と昇進の関係にかkしては組織的な調査が行われており、数多くのデータがそろっている。あなたが賢いキャリア戦略を立てないなら、まず事実を知っておくべきだろう。多くの組織、多くのポストで、実績はさほど重要な意味を持たないことが、データによって明らかになっている。つまりあなたの仕事ぶりや目標達成度はおなじみの人事評価にも反映されないし、在任期間や昇進にすらさほど影響しないのである。

 

社会心理学者のデービッド・スクールマンは、いまから二〇年ほど前に、公共部門で働く事務職三五四人の人事評価結果を調査した。この調査では、人事評価を担当した上司との関係性に基づいて職員を分類している。具体的には、上司が着任する前からその職場で働いていた職員、上司が直接関与した審査において上司の推奨によって採用・昇進した職員、上司が推奨しなかったにもかかわらず他の人の推奨で採用・昇進した職員、いった具体である。この最後のケースでは、上司は自分が推奨しなかった職員を評価することになる。このように分類したうえで、スクールマンは、採用・昇進審査への関与の有無はその後の人事評価にどう影響するかを調べた。

 

読者のご想像の通り、上司は自分が採用・昇進審査で〇印をつけた職員には、元からいた職員や当初バツ印をつけた職員よりも高い評価を与えていた。人事評価の客観的な基準が決められている場合でさえ、審査への関与の有無が評価に関係してくることが確かめられたのである。とりわけ自分の反対を押し切って採用された職員に対する評価は、〇印の職員はもちろん、元からいた職員よりも低かった。スクールマンの研究は、採用の決定といった深い関与がその後の人事評価を左右することを示した。この結果一つとっても、個人の評価に影響するのは、仕事の成果よりも上司との関係性であることがうかがえる。

 

昇進(昇格、昇給またはその両方)に関する広範な調査でも、社員の運命が実績とさほど関係しないことが確かめられている。一九八〇年に経済学者のジェームズ・メドフとキャサリン・エイブハラムは、企業の給与は実績よりも年齢および在職期間との相関性が強いと指摘した。その後にアメリカをはじめ世界各国を対象に行われた調査でも、この指摘の正しさが確認されている。たとえばオランダの航空機メーカー、フォッカーの事務職のデータを分析したところ、「きわめてよい」の評価を得た人の昇進率は、「よい」の人より一二%高いだけだった。一方、多くの研究が、学歴、人種、性別などさまざまな要素が昇進と関係づけられることを検証している。実績も統計的に有意な関係は認められるものの、その影響はきわめて小さい。たとえば、さまざまな業種の社員二〇〇以上を対象した調査では、上司は部下の昇進・異動を決定する際に、在任期間、学歴、残業時間、欠勤を考慮したうえで、実績を勘案することが明らかになっている。また連邦公務員を対象として調査では、人事評価に実際の生産性はあまり反映されていないことが判明した。この調査では、実績とは無関係に学歴の高い人ほど昇進したことが確かめられている。