第2413冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • ネットワーク力はキャリア形成に役立つ


ネットワークの重要性仕事の種類によっていくらか異なるものの、キャリア形成にとってはまちがいなくきわめて重要である。ネットワーク力を持つ人の人事評価が一般的に高いことは、多くの研究で裏づけられている。給与や肩書きといった客観的な指標で見ても、仕事に対する満足度といった主観的な指標で見ても、共に評価が高いという。とは言えネットワーク力と成功に関する調査の多くは、両者を同時に測定しているため、因果関係が明らかでないという欠点がある。つまり、成功した人の方が幅広い人脈を持っているとしても、人脈のおかげで成功したか、成功したから大勢がその人の回りに集まってきたのか、定かではない。これに対し、先ほどのウォルフとモーゼルの研究は長期にわたって行われているため、示唆に富む。彼は二〇〇一年一〇月にドイツの会社員二〇〇人を対象にネットワーク力を調査し、その後二〇〇二年と〇三年に追跡調査を行った。調査では、給与と仕事満足度を成功の指標として設定している。調査の結果、幅広い人脈を持つ人は仕事満足度、給与、給与の伸び率がいずれも高い傾向にあることが確かめられた。また、人脈作りでは「社外の知人との関係を維持すること」「社内に知り合いを増やすこと」が重要であると報告されている。


ボッコー二大学(ミラノ)のアルノルド・キャムッフォらは、MBA教育の効果を測定する目的で、ベニスの夜間MBAコース修了生の追跡調査を行った。本人、クラスメート、第三者への体系的な聞き取り調査により能力と行動特性を調べた結果、能力とキャリアの成功(昇給・昇進)との相関性は低く、最も相関性が高いのは先進技術の理解度、次のネットワーク力であることがわかった。ドイツ、オーストラリアで行われた同様の調査でも、ネットワーク力が重要な成功要因であることが確かめられている。


ネットワーク力は、本書でたびたび触れてきた「目立つ」という点でも、競争に有利に働く。コンサルタントを雇うにせよ、エグゼクティブをハンティングするにせよ、新卒者を採用するにせよ、覚えていない人のことは選べない。単に相手の記憶に残るだけで、選ばれるチャンスはぐっと高まる。ネットワーク力のある人は、たくさんの人と知り合うだけでなく、まめに連絡をとっている。だから、誰かがアドバイスが欲しいとき、パートナーを探すときい、空きポストができたとき、きっとその人のことを思い出すだろう。このように、ネットワーク力はあなたを目立たせ、目立つ人は認められ、選ばれ、地位が高まる。そして地位が上がれば知り合いは増え、ネットワークは拡大する、という具合に好循環が起きる。