第2522冊目 「権力」を握る人の法則  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 集中


真夏の暑い日に干し草を日向に出しておいても、自然に発火するということはない。だがルーペをかざして太陽光線を焦点に集めれば、燃え出す。一点に集中した太陽光線は、集中しない場合よりもはるかに強力になるのである。まったく同じことが、影響力を獲得する努力についても言える。


集中と一口に言っても、やり方は何通りかある。まず一つは、一業種あるいは一企業に的を絞ってキャリアを形成することだ。一つのものに専念すれば知識が深まるし、人脈も築ける。たとえばブルース・コザードは、若い頃から製薬畑一筋である。イェール大学で理学士、さらにMBAを取得した後、製薬会社アルザに入社。めきめき頭角を現し、最高財務責任者(CFO)、執行副社長、最高執行責任者(COO)を歴任した。アルザがジョンソン・エンド・ジョンソンに買収されると、コザードは複数の製薬会社の顧問を務めた後にジャズ・ファーマスーティカルズを設立している。ビジネススクール出身者がひんぱんに転職を繰り返すのとは対照的に、コザードは卒業後一〇年間アルザにとどまり、その後も製薬業界から離れていない。製薬産業の技術や経営に関して該博な知識を得られたのは、この産業でずっとやってきたからだ、とコザードは胸を張る。それに、いろいろな業界を転々としていたら、これほど頼れる人脈は形成できなかっただろう、と彼は話している。


メリンダも、二〇〇二年からずっと同じクレジットカード会社で働いている。長くいれば社内の事情に精通し、よい人間関係を築くことができるので、賢く影響力を行使できるとメリンダは話す。最近では転職によるキャリアアップということがしきりに言われるが、生え抜きの社員の方が影響力を獲得しやすいことはまちがいない。S&P五〇〇社のCEOの経歴を調べたところ、その会社での勤続年数は平均一五年におよんだという調査報告もある。