第2414冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • ネットワーク作りは戦略的に


アルゼンチン出身アメリカの一流ビジネスクールを卒業したイグナチオは、MBAのお決まりのコースをたどり、故郷に帰って一流コンサルタント会社に就職した。ただしイグナチオは、同僚とは全然違うこと、それどころかアルゼンチンで初めてのことを一つやってのける。二〇〇七年六月に「MBAアメリカ」という名のネットワークとウェブサイトを立ち上げたのだ。「MBAアメリカ」の目的は、奨学制度のあるアメリカの一流ビジネススクールへ、アルゼンチンからの応募者を増やすことである。その後二年間でイグナチオは一〇人をかき集めて理事会を設置し、国内の一流大学三校でプレゼンテーションを行い、学生登録者を四〇〇人集めた。たった一人でネットワーク作りを始めた若く無名のイグナチオが、アメリカ留学を夢見る学生の間で知らぬ者のない存在となってのである。この成功の秘訣は、自分が務める会社のパートナーや、アメリカのビジネススクールを卒業しアルゼンチンで活躍している実業家など、著名な人々の賛同を得て、力を借りたことにある。その結果、イグナチオは自分の会社でもアイデアと実行力に富む人間として有名人なり、ひときわ目立つ存在になっただけでなく、企業、大学、学生、同級生など多様な人々を抱えるネットワークの中心にいる。片手間の仕事でさほどお金もかけていないのだから、すばらしい成果と言えよう。


もっとも片手間とは言っても、それなりの労力はかけなければならないから、人脈作りには戦略的に臨む必要がある。まずは知り合いになりたい人、なっておくべき人、コネをつくっておきたい組織のリストを作成するとおい。このリストに沿って人脈を拡げ、できるだけ多様な人と知り合う方法を考える。たとえば私の知人はいわゆる文系で、しかもバイオ関連業界で働いたこともないのに、この方面の仕事に就きたいと考えた。そして、会いたい人に狙いを定め、伝手をたどって紹介してもらい、首尾よく面会できればこまめに礼状を書き、会った人には有用な情報や自分の知っている重要人物を紹介するといった具合にして、自分を印象づけていった。こうして知り合った人から芋づる式に人脈を開拓し、短期間のうちにバイオ業界でかなりの影響力を持つネットワークを形成することに成功する。おかげで望みの企業に就職し、幸先のよいスタートを切ることができた。