第2415冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 有力なネットワークを築く


こうしたわけで、最も望ましいネットワーク戦略は、さまざまな産業、さまざまな地域にわたって、できるだけ異なる集団に属す多種多様な人と知り合うことである。ただし深く知り合う必要はないし、強い結びつきを育てる必要もない。だからと言って、そのようなネットワークがニセモノの脆い関係だというわけではない。社会的な紐帯には、強い密着性はいらないのである。だからあまり時間がなくても、有効なネットワークを作ることができる。「広く浅く多様に」を心がけるとよい。


ここで注意したいのは、組織も人も、つながっている仲間によって判断されるという事実である。だから誰もが、ステータスの高い人とお友達になりたがる。この単純な事実を裏返せば、いまのステータスを落としたくない人は、「格が下がる」とみなされるような行為はできないことになる。イェール大学ビジネススクールの元学部長で現在はアップル大学の統括責任者を務める社会学者のジョエル・ポドルニーは、投資銀行について興味深い質問を提出した。評判の高い投資銀行は、低評価の同業者に比べて優遇金利で資金調達できるなど、競争で優位に立っている。それなのになぜ、同業者から顧客を奪い取って市場を独占してしまわないのか。これに対する答は、こうだ。投資銀行業界の実証研究によると、地位の高い銀行ほど「格が下がる」ことを嫌う。シェアを拡大しようと思えば信用力の低い発行体と取引することになるため、現在のステータスに傷がつくというわけである。


あなたな自身のステータスを高める一つの方法は、高い理想を掲げ、社会的地位の高い人々が関心を持つような運動やプロジェクトを組織することである。そうすればあなた自身のステータスも上がり、同時に貴重なネットワークも手にすることができる。フィリップは、メキシコでまさにそれをやった。はなはだしい階層社会のメキシコでは、技能のいらない単純作業や肉体作業に従事する労働ははろくに教育を受けていない。教育を受けていないと賃金のよい仕事には就けず、一生貧困の中で暮らすことになる。そこでフィリップは、未熟練労働者を大量に抱える建設業界に狙いを定め、そうした労働者に教育を受けさせるための寄金を立ち上げた。すると、彼の在籍する工科大学の教授や国内の社会起業家団体がこの活動の社会的意義に感銘を受け、後押しすしてくれるようになる。フィリップはそうした人たちにくわえ、建設業界、不動産業界の経営者、それも意識の高い経営者たちと知り合うことができた。ネットワークはさらに建設関係の政府機関にも拡がっている。かくしてフィリップは、「情は人のためにならず」を実証してみせたのである。