第2416冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)


ネットワークの中心に位置する


ステータスの高い人々で構成された幅広いネットワークを持っていても、それだけで影響力を手にできるわけではない。あなた自身がネットワークのどこに位置づけられるかが問題である。大事なのは、中心にいることだ。中心にいる人には、情報を入手しやすい、評判が高まる、昇進しやすいなど、多くのメリットがある。このことは、調査でも確かめられている。ある新聞社を対象にした調査では、部門内のコミュニケーションをコントロールできる位置にいれば、昇進にきわめて有利だということが判明した。こうした調査結果は、昇進の決め手は学歴や勤続年数だという認識や、仕事ができれば出世できるという思い込みに反するかもしれない。だが実際には、影響力にもキャリア形成にも、ネットワーク内の位置づけが大いにモノを言う。


情報も連絡もすべてあなたを経由するようなネットワークを持っていれば、あなたの影響力はきわめて大きくなる。情報の流れをコントロールできること自体が影響力を形成するうえ、周縁にいる人は中心にいる人物を尊重するからだ。自分がネットワークの中心にいるかどうかは、何かことが起きたときにあなたに助けを求めに来る人がどれだけいるか、あるいはあなたに助けてもらうようアドバイスする人がどれだけいるかを調べてみればわかる。あるいは、ネットワーク内のやりとりがどの程度あなたを介しているかを調べてもいい。


中心の位置は、物理的な位置によって確保することも可能である。ここでは、シリコンバレーベンチャー企業で働くダニエルの例を紹介しよう。ダニエルはジュニアアナリストというかなり低い地位で採用され、入社してすぐ、自分のデスクの場所を選ぶ必要に迫られた。一つはフロアのコーナーにあるゆったりしたスペースで、パーティションで仕切られ、オフィス内の人の流れから離れていて静かである。もう一つは、著名なパートナーのオフィスのすぐ外にある小さなワークステーションで、仕切りもない。人がよく通るうえに丸見えである。ダニエルは、さして深い考えもなくワークステーションの方を選んだ。ところがこの位置を占めたおかげで社内の動きが手に取るようにわかり、パートナーのオフィスに出入りする人たちと会話を交わすようになる。「入社してほんの数ヵ月のうちに、毎月曜に開かれる全員会議では、幹部がぼくに意見を促したり、質問を発したりするようになった。そうなってしまえばこっちも準備しなくちゃならない。おかげでぼくは、新卒の新人のくせにアナリストに昇進できた。会社の歴史始まって以来のできごとだと言われたよ」