第3308冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 上司が気にすることを気にする


ルディ・クルーがマイアミで学校革命を推進していた当時、学校制度の予算は約四五億ドルで、五万五〇〇〇人以上のスタッフが雇用されていた。クルーはおそらく、自分に課された任務はあくまでよりよい学校作りであって、それにふさわしい人材を残したいと考えていただろう。だが教育委員の中には、誰がクビを切られるのかとビクビクしていた人もいたにちがいない。人種や社会階層の問題が関わってくるため、教育委員会の幹部職員の人種構成に神経を尖らせていたが、クルーは無頓着だった。


誰かが言ったように「クルー」ではなくラテン系の「クルス」という名前だったら、マイアミに大勢いるヒスパニック系住民の支持を得られていたかもしれない。ともあれ、人種差別を巡るあるパブリックコメントがきっかけでクルーは解雇されることになった。保身に躍起になる一部の委員に対してクルーが十分な敬意を示さなかったことも、命取りになったようである。


一般に期待されているほどには実績が評価されていない理由の一つに、実績と一口に言ってもさまざまな面があることが挙げられる。しかも、上司が重視することとあなたが大切と考えることは必ずしも一致しない。ジェイミー・ダイモンがシティーグループで職を失ったのは、サンディ・ワイルの娘と喧嘩をした直後だった。ワイルは会社の業績だけでなく家族の体面も気にかけるタイプだったのである。


上司が何を重視するか、自分はちゃんと知っていると考える人は少なくない。だが読心術の心得でもないかぎり、うぬぼれは禁物である。下手な準備をするよりも、上司に直接聞く方がよほど効率的だ。仕事で重視するのはどんなことか、自分に何を期待しているか、折りに触れて質問しよう。またアドバイスを求めるのも関係作りに役立つ。自分が無能に見えないように注意しつつ、力を貸してもらうかを質問するからには、上司の答に沿って行動しなければならない。