第3305冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 個人の評価に影響するのは、仕事の成果よりも上司との関係性


実績と昇進の関係に関しては組織的な調査が行われており、数多くのデータがそろっている。あなたが賢いキャリア戦略を立てないなら、まずは事実を知っておくべきだろう。多くの組織、多くのポストで、実績はさほど重要な意味を持たないことが、データによって明らかになっている。つまりあなたの仕事ぶりや目標達成度はおなじみの人事評価にも反映されないし、在任期間や昇進にすらさほど影響しないのである。


社会心理学者のデービッド・スクールマンは、いまから二〇年ほど前に、公共部門で働く事務職三五四人の人事評価結果を調査した。この調査では、人事評価を担当した上司との関係性に基づいて職員を分類している。具体的には、上司が着任する前からその職場で働いていて職員、上司が直接関与した審査において上司の推奨によって採用・昇進した職員、上司が推奨しなかったにもかかわらず他の人の推奨で採用・昇進した職員、といった具合である。この最後のケースでは、上司は自分が推奨しなかった職員を評価することになる。このように分類したうえで、スクールマンは、採用・昇進審査への関与の有無はその後の人事評価にどう影響するかを調べた。


読者のご想像通り、上司は自分が採用・昇進審査でマル印を付けた職員には、元からいた証印や当初バツ印を付けた職員よりも高い評価を与えていた。人事評価の客観的な基準が決められている場合でさえ、審査への関与の有無が評価に関係してくることが確かめられたのである。とりわけ自分の反対を押し切って採用された職員に対する評価は、マル印の職員はもちろん、元からいた職員よりも低かった。スクールマンの研究は、採用の決定といった不快感よがその後の人事評価を左右することを示した。この結果一つとっても、個人の評価に影響するのは、仕事の成果よりも上司との関係性であることがうかがえる。