第3119冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 胴体を盾で守る


嫌いな人やものからのけぞって遠ざかるのが無理なとき、または相手に失礼にあたるときには、無意識のうちに腕や持ち物を使って壁を作ることが多い。衣類や手近にあるものでも、同じ目的に使える。たとえばビジネスマンは、気詰まりな相手と話をする前に急に上着のボタンをはめることがあり、話が終わるとすぐにボタンをはずす。


上着のボタンをはめるのが、もちろんいつも不快なサインだとは限らない。正式な席にふさわしく服装を整える必要があるときや、上司への敬意を見せるときに、よくボタンをはめる。もちろん、たとえばバーベキューを楽しむときのように心からリラックスしているわけではないが、特に不安な気持ちを表しているわけでもない。服装と、身だしなみにどれだけ気を配るかによって、人の与える印象に影響する場合があり、相手にどれだけ心を開き、親しみやすいかどうかを表すこともある。


当然かもしれないが、女性は男性より胴体を隠す傾向があり、特に不安や緊張、警戒心などを感じたときにはそうする。両腕を胃の前、ちょうど胸の下あたりで組、胴体をかばって安心感を得ることがある。片手で反対の腕のひじをつかみ、胸にバリアを張ることもある。どちらの行動も無意識で、とりわけ人間関係で何か不愉快なことがあった場合に、身を守って周囲に垣根を張る意味をもっている。


大学では、女子学生がノートを胸の前に抱えて教室に入ってくるのをよく見かけた。最初の何日かは特に多いが、安心感が増してくるにつれ、ノートを脇に抱えるようになる。それでも試験のある日には、男子学生にまで胸を隠す抱え方が増えるようだ。女性は、特にひとりで座っているときなどに、バックパックや手提げカバン、ハンドバックなどを盾のように抱えることがある。テレビを見ながら、つい膝かけで胸まで覆ってしまうように、体の前面を何かで隠すと守られた感じがあって安心する。体を引き寄せて何かを待つのは、ことに体の前面の場合には、どんな状況であってもその瞬間に必要とする安心感をもたらす意味をもっている。実際に胸の部分を守っている人を見かけたら、それは不安や不快の正確な指標だと思っていい。状況をよく見極め、その不安な原因をつきとめれば助けてあげらるし、少なくともよく理解する手がかりになる。