第3118冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)


体の前面をそむける行動の逆は、前面をまっすぐ向ける行動だ。私たちは好きなもののほうに前面を見せる。子どもたちが抱きつこうと駆け寄ってきたら、邪魔なものをよけ、腕も広げて、体の正面で迎え入れる。前面をまっすぐ向けるのは、そこが温もりと心地よさを最もよく感じられる場所だからだ。人やものに否定的になることを表す「背を向ける」という言葉は、私たちが好きなものには体の前面を、嫌いものには背中を向けることから生まれた。


同じように、私たちは好きなもののほうに胴体と肩を傾けて、心地よさを表現する。教室の場合、生徒は好きな教師の授業のときには体を教壇のほうに傾け、自分でも気付かないうちに椅子からはみ出すほど身を乗り出して、ひとことも聞き逃すまいと熱心に聞いていることが多い。


恋人同士がコーヒーテーブルに向かい合ってもたれ、顔を近づけて親しげに見つめ合っている場面をよく見かける。そんな二人は体の前面をまっすぐ相手に向け、最も傷つきやすい部分をさらしている。これはごく自然な、社会の利益になる辺縁系の反応だ。人やものが好きなとき、近付いて前の(最も弱い)面をさらすことによって、自分が自由な気持ちで接していることを示す。そしてこの姿勢をミラーリングによって交換すれば、親密さが行き来し、感謝の気持ちが反映されて、社会の調和がもたらされることになる。


体を傾ける、遠ざかる、前面をそむけたりまっすぐ向けたりするなどの、胴体によるノンバーバル辺縁系行動は、会議室ではおなじみのものだ。気の合う同僚たちはあまり距離を置かずに座り、前面をまっすぐ相手に向けて、前かがみになって仲良さそうに上体を近付ける。ところが意見が対立すると、体を固くし、(何か言われないかぎり)体の前面をそむけ、上体をそらして遠ざかろうとする。この行動は無意識で相手に「私はあなたの意見に賛成していない」と伝えている。ただし、すべてのノンバーバルに共通の点として、こうした行動も前後関係に即して分析しなければならない。たとえば、新任の人なら会議で自由に振る舞えず、ぎこちない動きになるだろう。この場合には、姿勢が固くて腕の動きが少なくても、別に反感や不賛成のサインではない。単に新しい環境で神経質になっているだずだ。