第3117冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 体の前面をそむける、体の前面をまっすぐ向ける


辺縁系が、遠ざかりたい、避けたいという感情に応じて命じた胴体の動きを見れば、本当の気持ちがとてもよくわかる。人間関係で、一方の人がどこかうまくいっていないと思ったときは、たいてい相手がわずかながら体を遠ざけていると感じたのが原因だ。体を遠ざけるという動作は、「体の前面をそむける」という形をとることもある。私たちの体の前面(腹側)には、目や口、胸や乳房、生殖器などがあって、好き嫌いにとても敏感に反応する。気持ちがよければ、体の前面を好きなもののほうにまっすぐ向け、すべてをさらけ出す。心地よくさせてくれる人に対しても同じことが言える。その反対に、何かがうまくいかなくなったり、人間関係が変化したり、嫌いなことについて話していたりすると、私たちは体の位置や向けを変えて「前面をそむける」。体の前側は人体の中で最も攻撃に弱い面なので、辺縁系が私たちを傷つけたり困らせたりするものからなんとかそこを守る必要がある。たとえば、パーティーで嫌いな人が近付いてくるのが見えると、とっさに、無意識のうちに、わずかに体の向きを横にしてしまうのは、そんな理由があるからだ。恋人同士の場合、前面をそむける機会が増えれば、関係がこわれそうな何よりの目安になる。


視覚から得る情報に加えて、大脳辺縁系は不快な会話にも反応することがある。テレビのトーク番組を、音声を消して見てみるといい。ゲストが反対意見を言いながら、上体をそらして相手から離れようとするのがはっきり見えるだろう。つい最近、共和党大統領候補の討論番組を見ていたら、候補者の間には十分すぎるほどの空間があったのに、賛成できない意見が持ち出されるごとに互いに体をのけぞらせ、遠ざかっていた。