第2753冊目 ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)


ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫


言うまでもなく、ほかにもいろいろな投資の方法があるが、株や債権を考えるのなら、前もって入念に計画することが必要である。あまりにも保守的に聞こえるかもしれないが、株の信用買いには気をつけるように。失ってもいい金しか投資してはいけないからである。一部だけ払い込んだ投資物件が値下がりしたために、無一文になる場合があり、あるいは個人的な破産を免れるための差額支払い用に借金までしなければならなぬ場合もある。そうした危険を避けることだ。私が常に皮肉に感じるのあh、毎日株式や債券を扱って生計を立て、私たち素人に何を買えばいいのか、助言する人たちの多くが、数百長者からほど遠いことである。彼らが全時間就業でもできないことを、私たちパートタイムでかじって、成功する当てがあるだろうか?


このごろは、ことに子供ができるまでは、夫婦が両方とも仕事を持つのが普通である。二人分を合わせると、自由に使える所得はかなりの額になる。自制心のある夫婦なら、一人分の所得には手をつけないで、家の頭金にし、ローンの返済をなるべく早く済ませようとするだろう。そのためには強い意志が必要である。君がたぶん気づいているだろうが、若い人たちの多くは、金を銀行や家に寝かせておくことに耐えられない。冬の休暇を南で過ごしたり、最新型の自動車を二台持ったり、週末ごとに高級レストランで食事をしたりして使わないと、楽しくないのである。きちんと計画を立てれば、これらの楽しみもひとつふらいは予算に組み込むことができるし、実際にそうするべきだろう。生活にはうるおいが必要である。ただ、二人で働きながら、毎年、可処分所得を一セントも残さないで使ってしまうとあっては、この二人の将来に不安を感じないでは居られない。子供ができ、一人分の所得での生活が始まると、法外に手きびしい衝撃を感ずることがふつうだからである。経費を切り詰めて、生活水準を下げることは、決して容易ではないし、快いものでもない。楽しみは私たちの生活のなかで、なくてはならない役割を演じるが、ヘンリー・ディヴィッド・ソローも言ったように、「楽しみに金のかからない人が最も裕福である」。