第2754冊目 ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)


ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫


(指導者は生来指導力をそなえているといわれ、たしかにそういう場合も多いが、会長の任務を引き受ける決心をしなたらば)学ぶことによって指導者になる人も決して少なくないことを忘れないように。人が学ぶことによって会計士や医師、弁護士、あるいはインディアンの酋長になっていくのと同じである。


優れた指導者は、人びととの意志の疎通をはかることから始めまる。人びとと親密な関係を保ち、あるいは結び、人びとが君の努力に呼応するようにしなければならない。君の考えに自分自身の優れた考えを加えて、それらを実行する方法も考え出してくれる、頼り甲斐のある、革新的な人びとを選びだす必要がある。これが第一段階である。


このような役員たちを選び出したら、君たちが対処しなければならないすべての問題について、その感触を掴むことが肝心である。そのためには、問題をひとつ残らず書きだして、それぞれの背景を多少付記し、一日か二日、関係者全員を集めて、ひとつずつ、徹底的に検討するしかない。このような会議のあとでは、もやのかかった頭のなかで、さまざまな考えや戦略がざわめいているだろうか、二、三日おいてから優先順位を決めて、報告書をまめるように。これが第二段階である。


優先順位は大胆に決めるように。指導者は思いきって同輩の先頭に立たなければならない。それが指導者というものである。今後の計画を立てるときには、個々の分野の担当者として、君のチームのなかで誰が適任であるかを考慮するように。計画にってはおそらく当別委員会の設置が必要になるだろう。このときに注意を怠ると、みじめな失敗に終わりかねない。委員会組織の最も重要な要素は、当然ながら、仕事をする委員長である。委員長の肩書きは欲しがるが、委員会の使命を果たすうえで、何の役にも立たない人がすくなくない。このような人は、できれば最初に任命するときに、疫病なみに避けるように。間違いを犯したら(どんなに優れた指導者にも間違いはある)、如才なく追い払うこと。自分の仕事が忙しくて、同業団体の任務をおろそかにしている人には、はっきりとそう告げるといい。そのほうが相手に対しても親切だろう。