第2755冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

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  • 人に好かれる最強の方法は犬を真似ること


人に好かれるための法則を説明しましたが、もっと単純に、人に好意をもってもらう最強の方法を知りたいと思いませか?


そのことについて考えるには、まず自分、あるいは周りの人のことを考えてもらうとよいでしょう。家庭の中で、一番好意を持っている相手は誰でしょうか。


お父さん? お母さん? 兄弟? 子供ですか?


では、どんなときも、常に好意を持ってる相手は誰でしょうか。誰でも怒るときも泣くときもあります。嫌みを言うときもあればわがままなときもあります。そんなときは、いくら好きな人でも、ちょっと嫌な感じがしてしまうものです。しかし、そのようなことがない相手は?


ペットの犬はどうですか?


犬は可愛い動物です。私たちが家に帰るとしっぽをふって大喜びします。なでてあげたり、餌を与えたりすると、素直に大喜びします。口答えもせずよく従います。家庭の中で犬が一番好きだといういう人は、多いのではないでしょうか。


では、なぜ犬はそんなにも好意を持たれるのでしょうか。それは常にこちらに好意を持ってくれているからです。犬は気分によって私たちを嫌ったりしません。愚痴も嫌味も言いません。私たちを批判することもありません。それに比べて人間はどうでしょうか。人間は気分次第です。エゴに囚われています。嫌味を言うことあれば、愚痴を言うこともあります。起こることもあります。そうすると、私たちは嫌な気分になります。批判されれば自尊心が傷つきます。これが犬と人間の違いです。


犬に学び、人に好意をもってもらう最強の方法とは、相手に好意を持つ、という方法です。心理学では、これを「好意の返報性」と言います。相手から好意を持たれると、こちらも好意を持ってしまう、という法則です。反対に相手から悪意を持たれると、こちらも悪意を持ってしまいます。これを「悪意の返報性」と言います。相手に対する感情は、相手に伝染することを憶えておきましょう。したがって、できるだけ相手に悪い感情を持たず、好意を持つことです。そうすれば、相手からも好意を得られる可能性が高まるでしょう。その上で、質問をすれば、その質問に答えてくれる可能性もまた高まるというものです。


さて、犬の話だけではなんですから、人の話もしておきましょう。


ギネスブック」に載ったセールスマンにジョー・ジラードという人がいます。彼は、シボレーという車を売っていたのですが、15年間に1万3001台、1日最高18台(!)、1ヶ月最高174台(!!)も自動車を販売して、世界一のセールスマンとして「ギネスブック」に載っていました。


ジョーは、潜在的な見込み客数千人に、毎月メッセージカードを送っていたそうです。そこには、「アイ・ライク・ユー」、「あなたが好きです」と書いていました。それを毎月送るのです。受け取って嫌な気がする人はいるはずがありません。相手も好意を持ってくれます。ジョーのようなことをされたら、相手は、自分が特別な存在だと思ってしまい、ジョーに好意を抱きます。そして、ジョーから車の購入を勧められると、勧めに従って購入してしまうのです。このような「好意の返報性」の強力な法則を使って、ジョーは、「ギネスブック」に載ったのです。


ジョー・ジラードの話で、次のような話もあります。


ある時、ショールームを訪れた中年女性がいました。ジョー・ジラードは、シボレーという安めの車を売っていますが、その中年女性は、高めの車であるフォード車を買うと決めていたそうです。ところが、フォードの店のセールスマンから、1時間後にまた来てくれと言われたので、時間つぶしにシボレーを見にきたのです。彼女は、「自分への誕生日プレゼントなの。今日、55歳になったのよ」と言い、白のフォードを買う予定だと言いました。ジョーは言います。「それはおめでとうございます。すぐ戻るので、ちょっと待っていてください」。そして、少し席をはずし、戻ったジョーは、時間つぶしにつきあい、シボレーの自動車の案内をしていました。15分後、事務所の女性がバラを1ダース抱えてきて、ジョーに手渡しました。ジョーはバラを中年女性に手渡しました。「この良き日がこれからも何度もやってきますように」。彼女はとても感激して涙を流し「お花をいただくなんて何年ぶりかしら」と言ったそうです。そして、2人で話しているうちに、彼女はフォードのセールスマンのことを話しました。フォードのセールスマンは、彼女の案内中に昼食の時間になったからといって、彼女を置いて昼食に出かけてしまったというのです。その結果、彼女は時間が空いてので、シボレーを見に来たというのです。


しばらく時間をつぶし、彼女がフォードの店に戻る時間になりました。しかし、彼女は戻りませんでした。そして、彼女は、フォード車ではなく、シボレーを買い、小切手で全額払ったそうです。


ここから何が学べるでしょうか。人は、買うものを決めていても、自分が大事にされていると思えば、喜んで買うものを変更することがある、ということです。


相手に好意を示し、特別扱いしまいしょう。それは、紛れもなく強力な結果となって表れることでしょう。


では、質問によって自分の好意を相手に伝えるためにはどうしたらよいでしょうか。


1つには、「相手に興味を持って相手のことを質問する」という方法があります。私たちは自分のことについて質問を受けるとき、「ああ、私のことを知りたがっているな」とか「この人は私のことに関心がないけれども仕方なく聞いているのだな」ということを敏感に感じ取ります。そして、相手のことを知りたがっていると感じると、自分に対して重要感を感じ、自尊心が満足して相手に好意を抱いてしまうのです。


ですから、相手に質問をするときは心の底から相手のことに興味を持ち、「あなたのことが知りたい」という気持ちで質問をすることです。そうすれば、必ずや相手はあなたに好意を抱き、快く質問に答えてくれることでしょう。


イギリスの政治家であったディズレイリは、次のように言っています。「他人と話をするときには、その人のことを話題にしなさい。そうすれば、その人は何時間でもこちらの話を聞いてくれるだろう」。私たちも、ディズレイリのように、他人と話をするときは、相手に興味を持ち、相手のことについても質問をしましょう。そうすれば、その人は何時間であろうともこちらの質問に答えてくれるでしょう。