第2752冊目 ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)


ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫


すでに述べたように、私たちはみな違うし、たいていは皮膚が薄くできている。違うことによって批判され、皮膚が薄いことによって傷ついて、ときにはひどく落ち込むこともあるだろう。しかるべき批判者が、上手に、如才なく、有益な助言を与えようとしても、苦しむだけでその効果が全然あがらず、得るところのない人もある。この気の毒な、過敏な人たちは、苦悩に満ちた人生を送るだろう。他人の支援を受け入れることができないからである。自分の間違いばかりが聞こえて、それを正す方法は一言も聞きとれないからである。


批判の有害な影響のほとんどは、慎重に内容を選び、話し方に気をつけることによってさけることができる。そのひとつでも怠る人は、誰も耳を傾けないし、好意を持たないし、近づこうとしないだろう。そのような人は、社員のあいだにあらゆる種類の無言の抵抗を生むことによって、全体の効率を著しく低下させるだろう。こういう人たちに用心すること。ことに経営陣に加わった場合には、大きな損失を招くだろう。


最近の経営管理で流行しているのは、「職務評価」である。年に一回社員を呼びつけて、良かった点や悪かった点を告げる方法だが、私は人の能率をそのように評価することに反対である。人間の本質に反するように思われるからである。稀な例外を除いて、平均的な人間は大量の称賛や批判を扱いかねる。私は主だった社員については、毎日職務評価をしている。良い仕事をすれば褒め、間違いあれば、軽く注意する。良かったことと、悪かったことを一年分ためこんで、一度にぶちまけることは、私のやり方に反する。仰々しい職務評価は、通知表を思わせる。私としては、毎日評価するほうがいい。部下が今日困っているのに、なぜ「評価」まで三カ月も待たなければならないのか? 彼はいま助言を必要としている。避けられる間違いを一日でも余分に続けさせたくはない。しかも、批判は大量に与えるよりも、少しずつ与えるほうが、自尊心の負担にならないし、ずっと生産的になると、私は確信している。