第2410冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 社内外にコネを作る


私が初めてダンに会ったのは、二〇年以上も前のことである。当時彼は私立大学で労組担当の責任者をしていた。だが彼にあh、たいそうな野望があった――学長になりたいというのである。ダンは博士号を持っていたし、教育に関する論文をすでに何本も発表していたが、労組担当では大学運営の上層部をめざすのによい位置とは言えない。ダンもそのことはよくわかっており、早いところそこから脱出し、教育局長などの出世の本流の乗りたいと考えていた。問題は、現在の位置でどうやってそれをやるか、である。


専門職の就いている人の多くは、連盟や協会など関連団体のメンバーになっているものだが、ダンも大学スタッフ協会(CUPA)に加入していた。この協会は、毎年の総会に外部から講演者を招く。ダンはその手配や会場設営などのボランティアを勝って出て、次第に協会内で昇進を果たしていた。最初は研究担当副理事長になって各種プログラムの指揮をとり、その後に理事長に昇格した。理事長になると、大学に年金商品やら人事管理ソフトやらいろいろなものを売り込みに来る企業との接触は増えるし、自分の裁量で高い講演料を払って有力者を講演会に招くこともできる。また、学術機関の幹部に会う機会も飛躍的に増えた。こうした人脈を拡げ、多くの有力者の後ろ盾を得たダンは教務局長にみごと転身し、さらに現在は、ある大きな州立大学で研究担当副学長を務めめている。


アイバンは、ある大手経営コンサルティング会社にジュニアコンサルタントとして入社した。とは言えばジュニアコンサルタントなぞというものは、その他大勢の一人に過ぎない。アイバンは、会社が公共部門や公共政策関連への進出を強化したいと考えていることを知っていた。そこで、その方面のセミナーを企画し、精力的に開催する。本職をこなしつつ片手間でやるのだからかなり大変だったが、そのおかげでパートナーの間で顔が売れていった。やがて、公共部門からの受注やコネクション作りに力添えをしてくれる人物を講師に招くべく、アイバンに予算が与えられるようになる。この軍資金を使って、アイバンは有力者との人脈を一段と拡げることができた。誰もが著名コンサルティング会社で話すことを喜んだし、気前のよい講演料に感謝した。