第3575冊目「権力」を握る人の法 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

-社内外にコネを作る

 

 

私が初めてダンに会ったのは、二〇年以上も前のことである。当時彼は私立大学の労組担当の責任者をしていた。だが彼には、たいそうな野望があった――学長になりたいというのである。ダンは博士号を持っていたし、教育に関する論文をすでに何本も発表していたが、労組担当では大学運営の上層部をめざすのによい位置とは言えない。ダンもそのことはよくわかっており、早いところそこから脱出し、教務局長など出世の本流に乗りたいと考えていた。問題は、現在の地位でどうやってそれをやるか、である。

 

 

専門職に就いている人の多くは、連盟や協会など関連団体のメンバーになっているものだが、ダンも大学のスタッフ協会に加入していた。この協会は、毎年の総会に外部から講演者を招く。ダンはその手配や会場設営などのボランティアを買って出て、次第に協会内で昇進を果たした。最初は研究担当副理事長になって各種プログラムの指揮をとり、その後に理事長に昇格した。理事長になると、大学の年金商品やら人事管理ソフトやらいろいろなものを売り込みに来る企業との接触は増えるし、自分の裁量で高い講演料を払って有力者を講演会に招くこともできる。また、学術機関の幹部に会う機会も飛躍的に増えた。こうして人脈を広げ、多くの有力者の後ろ盾を得たダンは教務局長にみごと転身し、さらに現在は、ある大きな州立大学で研究担当副学長を務めている。