第3574冊目「権力」を握る人の法 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

-ちょっとした手助けがい実を結ぶ

 

 

仕事を手助けするのも、喜ばれる。とりわけ、おもしろみのない仕事、延々と続く単調な仕事を引き受けるのは、手始めとして理想的である。たとえばフランク・スタントンがそうだった。スタントンはCBSの社長で放送業界のドンと呼ばれる人物だが、一九三五年にオハイオ州立大学の博士課程を出て二七歳でCBSに入社したとき、調査部に配属された。この部署はたった二人しかおらず、必然的に予算は乏しい。ただし、競争もないとうい利点があった。スタントンはここで七年間がんばった末に、調査担当副社長に指名されている。そのときには、調査部は一〇〇人の大所帯になったいた。しかもスタントンは、調査部以外にも広告、販促、PR、施設建設管理、ラジオ放送子会社七社の監督も兼務している。

 

 

サリー・ベデル・スミスは、CBSの創業者ウィリアム・サミュエル・ペイリーの評伝の中でスタントンに言及している。スミスの分析によれば、スタントンの戦略はごう単純である。まず、経営陣が興味を持ちそうな情報を見抜き、そうした情報をできるだけたくさん集める――それだけだ。調査部ならではのこうした仕事をこつこつこなすこによって、スタントンは自分を必要不可欠な存在に仕上げた。たとえば、各ラジオ番組の視聴者層、CBSが今度進出する地域のオフィス物件やその所有者、各種メディア市場の人口構成といった情報は、CBSの周辺に散らばっていて、丹念に探せば必ず見つかるものである。だが面倒くさがって誰もやらない。スタントンは進んでそれをやり、さらに、多少の策を弄して自分を演出した。本人曰く、「役員に何か訊かれて、自分が全然知らなくても、ちょっと聞いたことがあるようなふりをする。それからダッシュで下へ行って、世界年間で調べるんだ。調べるとなったら徹底的にやるから、たとえば広告業界については、そこらの広告代理店よりずっとくわしくなった」そうである。