第2408冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • ちょっとした手助けが実を結ぶ


仕事を手助けするのも、喜ばれる。とりわけ、おもしろみのない仕事、延々と続く単調な仕事を引き受けるのは、手始めとして理想的である。たておばフランク・スタントンがそうだった。スタントンはCBSの社長で放送業界のドンと呼ばれる人物だが、一九三五年にオハイオ州立大学の博士課程を出て二七歳でCBSに入社したとき、調査部に配属された。この部署はたった二人しかおれず、必然的に予算は乏しい。ただし、競争もないという利点があった。スタントンはここで七年間がんばれった末に、超担当副社長に指名されている。そのときには、調査部は一〇〇人の大所帯になっていた。しかもスタントンは、調査部以外にも広告、販促、PR、施設建設管理、ラジオ放送子会社七社の監督も兼務している。


サリー・ペデル・スミスは、CBSの創設者ウィリアム・サミュエル・ペイリーの評伝の中でスタントンに言及している。スミスの分析によれば、スタントンの戦略はごく単純である。まず、経営陣が興味を持ちそうな情報を見抜き、そうした情報をできるだけたくさん集める――それだけだ。調査部ならではのこうした仕事をこつこつとこなすことによって、スタントンは自分を必要不可欠な存在に仕立て上げた。たとえば各ラジオ番組の視聴者層、CBSが今度進出する地域のオフィス物件やその所有者、各種メディア市場の人口構成といった情報は、CBSの周辺に散らばっていて、丹念に探せば必ず見つかるものである。だが面倒くさがって誰もやらない。スタントンは進んでそれをやり、さらに、多少の策を弄して自分を演出した。本人曰く、「役員に何か訊かれて、自分が全然知らなくても、ちょっと聞いたふりをする。それからダッシュで下へ行って、世界年鑑で調べる。調べるとなったら徹底的にやるから、たとえば広告業界については、そこらの広告代理店よりずっとくわしくなった」そうである。


たいていの人は、つまらなそうな仕事や地味の仕事にはやる気をなくし、興味を持たない。そういう仕事を率先して引き受け、人並み以上にうまくやってのければ、あなたにビッグチャンスが回ってきたときにケチをつける人はだぶんいないだろう。それに、たいてい重要そうでない仕事も、意外に将来の役に立つものである。