第2407冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 時間と関心というリソースを提供する


のちのちのための関係作りは、単に相手に礼儀正しく接し、相手の言葉を傾聴するだけで事足りることも少なくない。カリフォルニア州議会で下院議長に上り詰めたウィリー・ブラウンのケースで何より驚かされるのは、ブラウン自身は民主党であるにもかかわらず、共和党議員から多数の支持を得て議長になったことである。しかもブラウンは、少量のマリファナ所有に対しては処罰を緩和する法案や同性愛者の差別を禁じる法案に賛成していた(保守的な共和党議員はこうした法案が大嫌いである)。なぜなだろうか。共和党議員の話を総合すると、ある重要な委員会でブラウンが委員長を務めていたとき、きわめて公正だったことが感銘を与えたらしい。彼は両派の議員に発言の機会を平等に与え、よく意見を聞き、もっともな主張に対しては党派を問わずに賛成したという。このように、とくに便宜を図らなくとも単に公正で礼儀正しいだけでも、人は好感を持つものである。というのお、礼儀正しい人間を攻撃するのはむずかしいからだ。


ささやかな行為が意外に大きな効果を発揮することは、覚えておいて損のない事実である。たとえば誕生パーティーに出席する、葬式に列席する、ランチを共にする、病気の見舞いに行くといったちょっとしたことが相手の心に通じる。上院議員ロバート・ケネディは、四七年におよぶ議員生活を通じて数々の法案を成立させている。また、共和党陣営にまで多くの友人を持っていた。それができたのは、誰に対してもフレンドリーで、よく話を聞いて相談に乗り、相手にとって重要なイベントには喜んで時間を割いたことが大きい。


人間は自分のことを話したがり、関心を持ってもらうのがうれしい生き物なのである。だから、そうする機会を与えてあげよう。よき聞き手になり、適切な質問を発しよう。誰でも持ち合わせているすばらしいリソース――時間と関心を気前よく提供しよう。あなたがまださほどの権力を持っていないとしたら、きっと時間をたくさんあるはずだ。その時間を、友人を作るために使おう。その人たちにとって(あなたにとってではなく)重要なイベントに出かけるために、時間を割こう。これが、私からのごくごく実践的なアドバイスである。