第2397冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 誰でも自分を変えられる


必要な資質が何であれ、若いうちしか身につけられないと考える人が多い。だが、ロン・メイヤーをはじめ多くの成功者の経歴を見ると、けっしてそうではないことがわかる。たとえば、カリフォルニア州議会下院で議長として最長記録を持ち、さらにサンフランシスコ市長も二度務めたウィリー・ブラウンは、初めての弁論大会で予選敗退、初めての選挙でも敗北を喫している。ブラウンは長い時間をかけて寛容の精神を養い、他の人の話に共感する姿勢を身につけ、対人スキルを磨いていった。楽器や外国語を習得するように、またゴルフやサッカーなどスポーツに習熟するように、権力や影響力の獲得には何が必要かを学び、それを開発することは可能である。たしかに若いほど身につけやすいが、しかし遅すぎるということはない。


ここでは、教え子のジョンを紹介しよう。ジョンは自分に自身がなく、権力や地位などはもっと先になってから考えればいいことだと思っていた。それでも就職活動をするにあたり、せかっくクラスで教わったことをすこしばかり実験してみようと思い立つ。これまでとはちがった行動をとって、どんな結果が出るか見てやろう、と考えた。


ジョンは、学歴や家庭状況からすれば自分がエリートとは言えないと思っていたが、それでも自信ありげに見せる必要があると理解していた。そこで、大手企業の採用担当者がキャンパスを訪問する日になると、他の学生に差をつけるようなスタイリッシュなファッションで身を固める。そしてグループ面接では、仲間に敬意を払いつつも、自分を力強く主張した。「まずまっすぐに姿勢を正して相手に近づき、しっかり目を見て名乗り、向こうが手を出し出す前に握手しました。グループ面接のときは、真ん中の席を先に選んで座り、積極的に発言しました。それやこれやで、自分は発言力のある学生だという印象を与えられたと思います」


この戦術が功を奏し、ジョンは7社受けて7社から内定をもらう。これはひとえに自己演出のおかげだとジョンは話している。なにしろ内定通知の多くに「立ち居ふるまいからして目立っていた」といったコメントが書かれていたという。


だから、あなたにもできる。エミー賞を二度、トニー賞を一度受賞した著名な振付家トワイラ・サープは、創造性に関して次のように語っているが、これは政治的スキルにも当てはまる。


「人が生まれつきそれぞれに異なる才能を持っていることはたしかです。ですが、私は遺伝子を言い訳にしたいとは思いません。自分で自分を乗り越えることは可能です。最高の創造性は、習慣と鍛錬から生まれるのです」