第2411冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 組織のステータスを活用する


もしあなたが社会的地位の高い組織に所属しているなら、それを自分の武器にすることができる。スタンフォード大学のスローン・プログラムは一年制の修士課程で、中堅エグゼクティブ向けのフルタイムのMBAコースである。ここには、会社からお金を出してもらって来ている人も少なくない。会社がお金を出すということは並々ならぬ期待の表れであるが、一年間現場から遠ざかることも事実である。大手コンピュータ・メーカーの事業本部長だったジムは、このせっかくのチャンスを最大限に活用しようと決める。そしてその年の人事評価では、仕事を一切していなかったにもかからわず、会社の一五%にしか与えられない「きわめて優秀」の評価を得ることができた。なぜそんなことが可能だったのだろうか。


まずジムは、学習状況の報告という形で上司のケンとコンタクトを絶やさなかった。だが絶大な効果を発揮したのは、ビジネススクールで教えてみたいというケンの願いを実現してあげたことである。ちょうどスローン・プログラムでは、企業会計のクラスで、当のケンやジムが働くコンピュータ・メーカーを題材に、人件費の配分を検討するケーススタディが行われていた。これは、ケンにちょっとばかり息(立派なリソースである)を売る絶好のチャンスである。


ケンを会計学の教授に紹介したら、ケーススタディで取り上げている会社の役員が実際に暮らすで教えてくれることを大いに喜ぶにちがいない。それでもジムは、自分の力ではいくら頼んでも教授がOKしてくれる保証はないとケンに説明する。そして、「もしうまくいったら、今度はボクをCEOに推薦してくださいよ」と冗談めかして言った。するとケンは真顔で「いいとも」と答えたものであるかくてケンは、晴れてゲストスピーカーとして招かれた。そしてジムは、大満足のケンから「きまめて優秀」の評価を頂戴した次第である。