第3600冊目「権力」を握る人の法 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

自分の仕事を巡って政治邸要因にまつわるリスクが存在することを見落とし、あるいは見ないふりをした挙げ句、重大な結果に直面してに暮れる例はすくなくない。数年前、知り合いの女性がビジネススクールを卒業し、東部の名門私立大学の次期学長アシスタントとして採用された。この大学の前学長は問題発言が多く派手好きで押しの強い人物だったため、辟易した理事会では温厚な後任者を選んでいた。ただし前学長は理事の一人としてとどまる。しかも新学長は新学期が始めるまで着任できないため、当面は前学長が指揮を執るという。これまでは、新学長の地位はいかにも危なっかしい。そんな人のアシスタントになるのは果たして賢明な選択だろうか。彼は、前学長の隠然たる勢力の下、何もできないのではあるまいか。

 

 

実際には、私の悲観的な予想よりもはるかに悪い事態となった。新学長は、就任することさえできなかったのである。前学長は理事会や有力者とのコネに巧みに使い、後任者の着任をあれこれ妨害した。すると、後任者はこんな面倒なところはご免だとばかり、あっさり別の「就職先」に鞍替えしてしまったのである。次期学長はもともと定評のある人物だから次の就職先を見つけるのも簡単だが、ヘレンにとってはそうはいかない。次の仕事を見つけるのは容易ではなかった。こうしたわけだから、「長」のつくポストでなくても、政治的なリスクはつきまとう。上をめざすつもありがあるなら、自分のポストだけでなく、関係の深いポストにも注意を払うべきである。