第3599冊目「権力」を握る人の法 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

そんなことは言われなくてもわかっている、と思われた読者が多いかもしれない。だがこの言わずもがなのアドバイスは、実際にはあまり守られていない。自分に適した場を見つけるには、いくつかのステップを踏む必要がある。第一に、自分を厳しく正直に見つめ、長所短所を見きわめ、自分は何が好きなのか、ほんとうは何をしたいのか、明確にしなければならない。しかしすでに述べたように、人間には自己高揚動機というものがあるから、自分を客観的に見られる人はなかなかいない。第二に、「みんながやっているから」という理由で多数派と同じ行動をとるのはきっぱりとやめなければいけない。社会心理学者の研究で明らかにされている通り、同調行動の圧力は強い。また、情報社会の影響力も同様の効果を持つ。「みんながやっているならきっといいことなのだ、何か合理的な理由があるにちがいない」という意識が働く。したがって人と違う行動をとるのはそうした集団の知恵に逆らうことになるので、強い抵抗を感じるわけである。そこで、みんなが株を買えば自分も株を買い、みんなが海外へ行けば自分も行く、ハイテク企業が人気なら自分もそこに就職する、といった現象が起きる。だがこのように無定見に同調行動をとっていたら、自分の道を見つけることはできない。