第2244目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学


「ビルの処方センター」は、フロリダ州ブランドンにあるすばらしい薬局だ。ジョン・ノリエガが父のビルから数年前に店を継いでおり、一九五六年以来、どこをどう見ても目ざましい成功を遂げてきた。この盛況な薬局のすぐ隣には大型チェーン店ウォルグリーンズがあり、一マイル以内には別の全国チェーンの薬局が三店舗も店を構えているのだが、何と車で一時間以上もかかるオーランドから、薬を求めてビルの店にやってくる客までいる。なぜだろうか? それは従業員全員が、すぐに行動を起こしてくれるからだ。どんな問題でも解決するまで努力してくれる。保健会社が支払ってくれない? 
この店が電話をして、支払にこびつける。医者が折り返しの電話をくれない? その医師にはジョンからの電話が入る。来るまで店まで行けない人がいれば、店のほうから車で来てくれる。何か説明してほしいことがあれば、印刷物をもらうだけでなく、薬剤師からじかに説明を聞ける。客が店内に入ると従業員のひとりが必ず対応し、しかも名前を覚えている。想像してみよう――この時代にあって、正真正銘の顧客サービスだ。


私の家から歩ける距離に薬局が二軒あるが、私はいつも二八マイルの距離を運転してビルの店まで行く。そのサービスと親しみやすい雰囲気には、その距離を運転するだけの価値がある。あなたの近所にそういう店がいくつあるだろうか? 「ビルの処方センター」は競争など怖がっていない。こと商品とサービスに関する限り、競争相手はいないからだ。事実、おいそれと真似のできないゴールドスタンダードになっている。この店のビジネスモデルはいたって単純なもので、「お客様に丁寧に対応し、お客様が来店した瞬間から、お客様のために行動を起こす」となる。顧客は群れをなして何度でも戻ってくる。


行動と同じくらい大切なのが態度だ。態度を測定することはできないけれど、売上の増減となって表れる。そして態度はほとんど、ノンバーバルで表現される。店や会社に入って、むかつくような態度の人物を相手にした経験は、誰でもありありと思い出せるのではないだろうか。そういう人物について、私たちは何を観察しているのだろうか? わずかにしかめた顔や、バカにしたような表情まで、すべて目に入っている。そんな表情は見せたくないし、私たちは顧客として、そんな行動に対して利益をもたらすべきではない。


それとは正反対の態度として、私はニューヨークにある世界規模の銀行を思い浮かべる。そこでは受付係が、入ってくる投資家に立って挨拶する。客はまさに特別な存在になった気分がする――しかもしれは簡単にできるノンバーバルだ。大きな労力は要らなくても、その姿は美しく、いつまでも忘れない印象を与える。


社員には、仕事ぶりと同時に見栄えも大切だと教えなければいけない。一方がもう一方を打ち消してはならず、両社が互いに強め合う必要がある。理想的には、社員を雇ってからではなく、雇う前にこのような期待を伝えておく。ほとんどの社員は秀でたい、成功したいと思っており、その実現は、少しだけ豊かな経験を積んで先を進む者の肩にかかっている。そして先輩は、何がうまくいき何がうまくいかないか、何が人に印象を与えるか、どのように振るまえばいいかを、彼らを教えることができる。社員がこの情報を手にすれば、輝くことができる。


基準を定めるについては、人は同僚性を尊ぶこと、ミラーリングは快適さを生むことを覚えておこう。行動と仕事ぶりについて共通の基準を共有するのは、快適なことだ。その結果として生じる団結力は、社員だけでなく顧客にも恩恵をもたらすだろう。この結束にはさまざまな名前がつけられている――モラル、チームスピリット、共通のビジョン、団結力。私はこれを、卓越への王者の道と呼ぶ。それは私たちが必至になって得ようと努力しなければならないもの、適切な注意と気配りによって得られるものだ。


最後に、もちろんあなた自身の基準を、あなたの社員に、あなたのノンバーバルを通して伝えることが肝心だ――自分がどのように顧客とスタッフに挨拶し、どう対応するかで、自分がオフィスと自身をどんなふうに手入れするかで、自分の態度と、自分のコミュニケーションと行動のスタイルで。つまり、「私が言うとおりにするだけでなく、私がするとおりにしなさい!」と伝えられるように。