第2245目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

  • 誰でも自分を変えられる


必要な資質が何であれ、若いうちからしか身につけられないと考える人が多い。だがロン・メイヤーをはじめ多くの成功者の経歴を見ると、けっしてそうではないことがわかる。たとえば、カリフォルニア州議会下院で議長として最長記録を持ち、さらにサンフランシスコ市長を二度務めたウィリー・ブラウンは、初めての弁論大会で予選敗退、初めての選挙でも敗北を喫している。ブラウンは長い時間をかけて寛容の精神を養い、他の人の話に共感する姿勢を身につけ、対人スキルを磨いていった。楽器や外国語を習得するように、またゴルフやサッカーなどスポーツに習熟するように、権力や影響力の獲得には何が必要かを学び、それを開発することは可能である。たしかに若いほど身につきやすいが、しかし遅すぎるということはない。


ここでは、教え子のジョンを紹介しよう。ジョンは自分に自信がなく、権力や地位などはもっと先になってから考えればいいことだと思っていた。それでも就職活動をするにあたり、せっかくクラスで教わったことをすこしばかり実験してみようと思い立つ。これまでとはちがった行動をとって、どんな結果が出るか見てやろう、と考えた。


ジョンは、学歴や家庭状況からすれば自分がエリートとは言えないと思っていたが、それでも自信ありげに見せる必要があると理解していた。そこで、大手企業の採用担当者がキャンパスを訪問する日になると、他の学生に差をつけるようなスタイリッシュなファッションで身を固める。そしてグループ面談では、仲間に敬意を払いつつも、自分を力強く主張した。「まずまっすぐに姿勢を正して相手に近づき、しっかり目を見て名乗り、向こうが手を差し出す前に握手しました。グループ面談のときは、真ん中の席を先に選らんで座り、積極的に発言しました。それやこれやで、自分は発言力のある学生だという印象を与えられたと思います」


この戦術が功を奏し、ジョンは七社受けて七社から内定をもらう。これはひとえに自己演出のおかげだとジョンは主張してりう。なにしろ内定通知の多くに「立ち居振るまいからして目立っていた」といったコメントが書かれていたという。


だから、あなたにもできる。エミー賞を二度、トニー賞を一度受賞した著名な振付家トワイラ・サープは、創造性に関して次にように語っているが、これは政治的スキルにも当てはまる。


一人が生まれつきそれぞれに異なる才能を持っていることはたしかです。ですが、私は遺伝子を言い訳にしたいとは思いません。自分で自分を乗り越えることは可能です。最高の創造性は、習慣と鍛錬から生まれるのです」


言うまでもなく、人は生まれと育ちから来る個性や特徴を備えている。だがそれをすこしばかり替えて影響力を発揮できるようにすることは十分に可能だし、望ましくもある。私のクラスにいたポールという学生は、自分にはそんなことは無理です、という。そこで私は彼に質問した。


私 君はスキーができる?
ポール ええ、もちろん。
私 君は生まれつきスキーができて、自然に滑れたのかな?
ポール いいえ、まさか。
私 つまり君はスキーができるようになった。だが君自身が認め限り、スキーのスキルが生まれつき備わっていたわけではない。スキーのスキルを習得できるなら、権力や影響力を身につけるスキルも習得できる。