第2246目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

  • 決意


何事も大成するためには努力と勤勉と根気が必要であることは、誰でも知っている。そして努力を続け、必要とあらば犠牲を払うためには、強い意志が欠かせない。たとえばシカゴ市長を務め、アメリカの歴史で最も優れた市長一〇人の一人と言われるリチャード・デレイは、五三歳になるまで市長選挙に立候補しなかった。「デレイは若い頃に立身出世を志したが、チャンスが訪れるのを辛抱強く待った。そして三〇年にわたって市議会で黙々とお決まりの仕事をこなしていた」という。リンカーンの評伝を書いたピュリツァー賞作家ドリス・カーンズ・グッドウィンによれば、リンカーンが政治家として成功した要因の一つは、断固たる決意だという。そうした決意があったからこそ、リンカーンは貧しい生い立ちや若い頃の挫折や周囲からの侮辱を乗り越えることができた。


そして政治の世界で言えることは、実業界にも通じる。たとえば玩具メーカー、マテルのCEOに上り詰めたジル・バラッド(後に更迭された)は、並々ならぬ野心の持ち主だった。彼女はよくハチをかたどったピンを髪に挿していたが、それにはわけがあった。「ハチはふしぎな生き物で、構造的に飛べるはずのないのに飛んでいる。だからハチを見るたびに、どんなに不可能に見えることでもやってやるぞという気になる」


大きな組織にいると、腹の立つこともあれば不満が溜まることもあり、やる気を削がれることも多々あるだろう。だが何としてもやり遂げるという確固たる決意があれば、あきらめたくなる弱気の虫や怒りを爆発させたい衝動を抑えられるはずだ。大手クレジットカード会社の副社長メリンダは、腹立たしい状況を我慢できたのは目標達成に全力投球していたからだと語っている。「理不尽なことが多かったけれど、いちいちそれに目くじらを立てなかったのがよかった」どうしても仕事で成功したかったら、感情をコントロールでき、自分のことに集中できたという。強い気持ちを持ち続け、他の人の言動に過剰反応しなかったことは、メリンダがスピード昇進を遂げた重要な要因と考えられる。