第1978冊目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 [単行本] ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学


美しさがもたらす配当


メディアやマーケティングでは美しさとカッコよさがもてはやされるのは周知の事実で、ここで示した例のとおり、それは政治と権力の分野まにまで及んでいる。ではビジネスの世界ではどうなのだろうか?美しさは関係あるのだろうか?


大学の卒業アルバムで卒業生の写真を見ながら、五年後に高収入を得ているのは誰かを予想しろと言われたら、外見は将来を予言しないから不可能だと答えるだろう。ところがふたりの研究者がまさにこの方法で、私たちの容姿がどれだけ重要かを探った。経済学者のダニエル・S・ハマーメッシュとジェフ・E・ビドルによれば、容姿のいい人はそうでない人に比べて雇用と昇進の機会が多く、平均収入が一〇から一五パーセント多いらしい。ふたりはまた、非常に容姿のいい人材を雇った企業は、平均的な容姿の人を雇った場合に比べて一〇から一五パーセント高い利益を得ていることも突き止めた。これはけっして目新しい話ではんく、聖書にさえ、美しいことが求められて報われる話がたくさん見つかる。


こんな話は物議をかもしそうだが、私はただ多くの人がすでに思っていること、研究者がよく知っていることを、明確にしておきたいだけなのだ――私たち人間には、ほかの動物と同じように、美しさを好む傾向がある。最も鮮やかな尾羽をもつクジャクから、たてがみが一番立派なライオン、最も堂々としたウマまで、動物は美しいものを自己選択しており、同様に人間も美人コンテストをするし、ほとんどの社会では人は容姿を基準にした恋愛プロセスを経てから結婚相手を決める。


蓼食う虫も好きずきという諺をもちだす人もいるだろうが、美しさを好む気持ちは人間の遺伝子に刻まれていて、そのために赤ちゃんは醜い顔より美しい顔を長い時間見つめるという研究結果もある。どの文化でも美しさが求められ、(メーキャップや装飾品を用いて)強調され、何らかの方法で報われる。


そななら、誰もがジョージ・クルーニーやモデルのクリスティ・ブリンクリーのような容姿をもたなければならず、さもなければ失敗する宿命なのだろうか? どちらも言えないというのが、その答えだ。生まれつき容姿に恵まれればすばらしいことだが、ここには大きな秘密がある。つまり、私たちは誰でも外見を磨くことができるのだ。何も目を奪うほど美しくなる必要はなく、ただ身だしなみを意識し、どう見えるかに細かい心配りをするだけでいい。


身だしなみを整えて清潔を保つとともにメーキャップなどを利用して外見に気をつかい、髪にも注意を向ければ、きっと違いが出る。テレビでイメージチャン時番組が人気なのは、外見を変えるだけで変身を遂げられるからだ。アドバイスに従うと見栄えも気分もよくなり、それがプラスの効果を生み出す。素敵に見える人は――必ずしも美貌は必要ない――自分でも気分がいいと感じ、より多くの友人をもち、周囲に認められ、手にする機会も増える。だから大切なのは、美人コンテストで優勝できるかや映画スターになれるかでなく、自分の外見を着るもの、与える印象に気を配るために、何ができるかだ。


人の外見には個人の好みで決められる要素がたくさんあるが、外見の規範は文化によるところ大きい。私がアメリカ西部で殺人事件を担当していたときには、ジーンズに糊のきいた真っ白なシャツ、ループタイ、カウボーイハットという身なりで仕事に行く人たちからよく話を聞いた。彼らはカッコよく決まって見えたが、それはウォール街で紺色のウールのスーツにイタリア製のシルクのネクタイがカッコよく見えるのと同じことだ。社会にはさまざまな境界線があり、私たちはそれぞれの境界内の規範に従う必要がある。人は、健康と活力と社会的適応を周囲に示すために身だしなみを整えるようなプログラムされていることを、忘れてはならない。


見栄えをよくする必要性を無視するのは賢明ではないが、ビジネスの世界では技能といった別の要素で外見を超えることができ、周囲の人は外見に目もくれなくなる場合があることを覚えておこう。すばらしい外見を超えることができ、周囲の人は外見に目もくれなくなる場合があることも覚えておこう。すばらしい態度を身につけ、誠実で親しみやすければなおさらだ。ただしこれらの点についてでさえ、周囲の人は私たちを目で見て手がかりを得ている。


身長の低さや身体障害などの不利な面は、魅力、カリスマ性、意志、前向きな考え方によって克服することができる。身長が低くても、カリスマ性があったり、人を感動させずにおかない存在感をもっていたりする人は――セレブやダンサーなど――必ず実際より身長が高いと思われている。そして超人気司会者のオプラ・ウィンフリーは、体重の問題がさんざん取り沙汰されているにもかかわらず、その暮らしぶりや個性、メッセージ、使命感、そしてそれらを身につけるための努力によって数百万人の支持を得ている。これがノンバーバルのすばらしい「美しさ」で、私たちはそれらを用いて、自分が好むところに、自分の強みや技能に、注目を集めることができる。