第2697冊目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • 上辺だけにあなどってはいけない――外見のノンバーバル


「人は見かけではない」と言いながら、私たちはしきりに外見にこだわるのだからおもしろい(最新のファッションを追い、アンチエイジング商品を買い、太ったことを気にし、誰が整形手術をしたかと噂し、ベストドレッサーとワーストドレッサーの記事を読む)。だが、外見というものがノンバーバル・コミュニケーションのひとつだとわかれば、矛盾しているように思えるこの執着にも納得がいくだろう。人間の脳の視覚野、つまり目で見たものを処理する中枢は、とても大きい。それが脳の中心部分として進化してきたのには、明らかに正当な理由がある。生き残りのため、そして美意識を満たすためだ。もし自分の車のすぐそばにだらしない格好をした男が立っていれば気付くだろうが、香水売り場に魅力的な女性が立っていても、やっぱり気付く。私たちはいつも周囲の人たちがどんなふうに見えるを観察し、目に入る情報の基づいて、誰と仲良くなりたいかを決めている――そして雑誌が最新のファッションを売り込めば、たくさんの人がすぐに流行の服装を真似る


人が美しいものに惹かれるのは生まれつきの性質だ。どの文化も、美貌、健康、若さ、美しいもの、対称性をもつものを好む。赤ちゃんでさえ美しいものが好きなことが、研究によって明らかにされている。赤ちゃんは左右対称の美しい顔を見ると微笑み、好きなものをもっとよく見ようとして、無意識のうちに瞳を大きくする(私が一三歳のとき、マイアミのドーヴィル・ビーチリゾートで女優のアン・マーグレットを初めて見かけた瞬間も、そんな感じだった――思わず息をのんでいまったものだが、きっと瞳も全開だったにちがいない)。


私たちはまた、立派な体つきの堂々たる風貌も高く評価する。だからクラブの用心棒に配属されるのは、体格がよくて貫禄のある男たちだ。人は背の高いものに心を惹かれる生物学的性質をもっており、リーダーの身長は全体の平均身長より高い傾向があることも、これで説明がつく。


外見がもたらす利益もよく研究されていて、「美しさがもたらす配当」と呼ぶことができる。経済学者によれば、容姿のいい人は仕事に採用されて昇進するチャンスを得やすいので、より多くの収入を手にする傾向がある。一方で、やはり研究によれば、容姿のいい従業員がいると売上が上がるので、会社も利益を得る。美しさがもたらす配当は広告主にはもうずっと前から常識となり、人気の化粧品はもちろんのこと、どんなものの広告にも見栄えのする面々が登場する。


見かけを重視する傾向が公平ではないかもしれないが、それが人間であり、ノンバーバルの達人になりたければ――自分と周囲の人たちの――外見に注意を払う必要がある。これについては第5章で、外見をどう管理していくかについて考えながら説明していく。