第1979冊目 読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書) [新書] 簑下 成子 (著), 佐藤 親次 (著)


読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書)

読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書)


ほんとうの笑顔と嘘の笑顔


人は気持ちが安定していないと口元の動きがガタガタします。嘘をついている人は目も泳ぎますが、口元も次に何を言うかを考えているので不自然な動きをします。自分に自信がある人は唇がきちんと閉じています。ほほ笑んでも両側の口角が同じレベルで上がっている。口元が安定しているので、顔のバランスが良くなります。その表情は違和感を与えないので、見ている側も安心します。嘘のない、口元が安定している笑顔は人をひきつけるのです。


笑顔は安心感を与えるだけではありません。「笑顔の優位性」には関してはすでに立証されています。


笑顔の人は印象が良く、相手に名前を覚えてもらいやすい。また、相手がその人が誰だったか思い出したり、見つけ出したりするまでの反応時間も短いのです。


その理由として、ミラーニューロンの働きがあげられます。自分が笑っていなくても相手の笑顔を見ることで、まるで自分に楽しいことがあって、笑ったかのような気持ちになるからです。


笑顔がいいと、相手に好印象を与えることができるだけでなく、営業成績が良くなるなど、ビジネス面にも有効であることが確認されています。


優秀なセールスマンには表情が豊かで、笑顔がいい人が多いといわれるのは、「またあの人に会いたいな」とお客様に思ってもらえるだけではなく、何かちょっと無理なことをお願いしても、笑顔で受け入れてもらえそうな印象を与えているからでしょう。それで次の商売につながる機会を作れるのではないでしょか。



接客業などではそういったスキルを取り入れ、同僚同士で笑顔の確認をする「スマイルチェック」を導入する企業も見られます。カメラで笑顔を読み取り、スマイル度を計測するシステムまで開発されています。


だから表情筋エクササイズなど、意図的に顔の筋肉を動かして表情を作る訓練が流行するのかもしれません。


アメリカの心理学者で哲学者のウィリアム・ジェームズとデンマークの心理学者、カール・ランゲは、「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」という心理学史上の名言を残しましたが、このジェームズ=ランゲ説の意味するところも、生理的反応のほうが心理学的な情動体験よりも先に起こるということを示しています。


アメリカでは「ポジティブに物事をとらえることができて、明るい人」が普通と見なされ、日本人のように落ち着いて静かだったり、物事をポジティブに考えたりする傾向があると、精神安定剤が処方されてしまうこともあります。


そのアメリカでは、どうすれば他人に好印象を与えることができるかという研究が進んでいます。無理にでも笑えば、その笑ったという行為から楽しくなるというメカニズムをもとに、いろいろなテクニックが開発されています。日本にもすでに輸入されていて、それを活用している人も大勢います。


「つらいことがあったときにこそ、笑いなさい」と年長者に言われたことがありませんか。「笑う門には福来たる」のことわざではないですが、笑っていれば幸福がやってくると、日本でもいわれています。


ただ、その表情をまねてみても、表面上だけのことで身についていないので、相手を動かすことはなかなか難しいのです。心の底から生まれた表情なら相手に「違和感」を与えません。


作っている表情はある程度、見破ることができます。


右側だけ笑っているのは「作り笑い」をしている人に多く見られます。顔の右側は左脳によって、言語敵にコントロールされています。「笑いなさい」という指令を表情筋に出すことができるので右側から口角をあげて、にっこり笑うことは少し訓練すれば可能になります。


向かい側ではほほ笑んでいる相手が笑いはじめるとき、左右の口角が同時に上がっているか、まず右側から上がっているか、一度じっくり観察してみてください。


また、口角をあげて笑っていても、何かトラブルがあったことを隠そうとしているとき、口元に緊張が見えることがあります。視線をはずさず、奥歯に力が入っているように感じたら、何か問題があったか、隠し通さなくてはいけないような嘘があるケースが考えられます。


ほんの少し、表情を作るメカニズムを知っていて、読顔力を持っていれば、その人本来の表情を読み取ることができます。


訓練で作った営業マンの笑顔よりも、その人が生来もっている笑顔のほうが見ていても安心できます。