第1977冊目 1分で大切なことを伝える技術 (PHP新書) [新書] 齋藤 孝 (著)


1分で大切なことを伝える技術 (PHP新書)

1分で大切なことを伝える技術 (PHP新書)


自分の口癖をチャックする


私はふだんテレビを見ていると、反射的に、話している人の口癖が気になってくる。「あの」や「ええと」「うん」「まぁ」が妙に多い人もいれば、例えていないのに「例えば」とか、逆に言っていないのに「逆に言うと」前置きする人もいる。当人は話のつなぎとして無意識に使っているのだろうが、聞く側の私としては、気になってくると煩わしささえ覚えてくる。


こういう口癖は、誰かに指摘してもらわないと気づかないものだ。そこで機会があれば、二人一組になってお互いの口癖をチャックしてみることをおすすめしたい。ある程度お互いに話をした後で、「今、『ええと』とを五回も言ったよ」などと指摘し合うのである。それを知るだけでも、かなり改善されるだろう。


もっとハードに修正したいなら、自分の話をテープに録音して聞いてみればよい。これはたいへんな苦痛を伴う。ふつうの神経の人なら、「なんてムダの多い話し方なんだ」と我ながら呆れるだろう。


もちろん、話し言葉が書き言葉のように正確である必要はない。むしろそれでは、言葉の潤いや膨らみが消えて、かえって聞きにくい。しかし、少なくとも話し言葉が文章になっているかどうかは重要だ。本人は気づきにくいが、主語と述語の関係などにおいて、話し言葉は往々にしてねじれやズレが生じやすいのである。


一度、ほんの一分程度でも自分の話を録音し、それを文字に書き起こしてみればどうだろう。たいての人は「こんなことを話していたのか」と衝撃を受けるはずだ。その自己嫌悪を乗り越えて修正していけば、かなりの精度の高い話し方が身につくだろう。


そこまでしなくても、と思われるかもしれないが、これはたいへん重要な訓練だ。意外に私たちは、自分を客観視してみる機会に乏しいのである。