第1947冊目  THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 03月号 [雑誌]


  • 敵をつくらず、かつ同調しないワザとは?


誰を、どの順番で巻き込んでいくかにもコツがあります。


周囲の感触をつかみたいときは、「中心から一番遠くにいる人」からアプローチをかけましょう。契約社員派遣社員といった、決して強い立場とは言えない人の意見を聞くのです。


日頃、意見を重要視されない人も必ず独自の見解を持っていて、それは「中心」からは得られないような貴重な内容であることが多いものです。


その後、その案件を上司に話す際に「派遣社員の○○さんに聞いたところ……」とひと言添えると、「そんなに細かく下調べしているのか」と好印象に映り、企画の通りも格段にスムーズになります。


仕事が動き出したあとは、反対者も出てくるでしょう。この場面で抑えるべきはもちろん、決定権を持つ反対者。とくに、数は少なくても強靱な反対者には要注意です。たいだいのメンバーが賛成の方向に動いても、一人が声高に反対すれば決定できないこともあるからです。


こうした相手には、「拳の下ろしどころ」を用意するのが得策。「勉強になります」「そうしたご意見があってこそ、我々は極端に走らずにすんでいます」などと言って相手を立てること。そうすれば矛先を鈍らせることができるだけでなく、相手の存在意義を強調することで反対者ですら当事者意識も喚起できます。これもまた、「巻き込み」の一つのかたちですね。


そう考えると、根回しとは周囲の関与を促しつつチームワークを強めることと言えます。


ただしそれは、決して同調することではありません。むしろ、「KY]であることが重要だと私は思っています。


チームの雰囲気が沈滞気味でも前向きな態度を貫く、愚痴や悪口が飛び交っても同調しない、といった姿勢が大切です。


ちなみに、悪口の仲間にされないようにするには、相手の話を「分析的に」聞く方法が効果的です。「具体的に何かあったの?」と細かく事実関係を聞き出していくと、愚痴を言いたいだけの相手は話す気をなくします。そして「この人は愚痴の相手には向かない」と見なされることにもつながるでしょう。


また、「kY」であるということは、余計な気遣いをしないということでもあります。


協力を頼みたい相手が忙しそうにしていたら、「こんなときに申し訳ないんだけれど……」などと前置きをしたくなりますが、これは逆効果。遠慮がちに話しかけられると、相手はかえって「断ってもよいのかも?」と思ってしまいます。ここはいきなり本題に入るのが正解です。


これは別の言い方をすると「目的を明確にしつつ振る舞う」ということです。何をしたいのかをハッキリ示せば相手も対応を決めやすくなり、それがひいては「仕事のしやすい人」という印象につながるのです。


目的に加えて、「立ち位置」を明確にしつつ行動することも重要です。


会社には営業・制作・管理など、部門により違った意見があります。もと営業マンが異動して予算管理に携われば、昔の主張と正反対のことを言わざるを得ない場合もあり得ます。しかしそこで迷うことなく、そのときの立場に基づいて行動することが大事。前歴や個人的感情によってぶれることなく振る舞える人は、「できる仕事人」として信頼されます。


自分の立場と仕事、行動の目的を常に明確にしましょう。それは職場内でのあらゆるコミュニケーションや根回しテクニックを支える、最も重要な基盤となるでしょう。