第1948冊目 THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 06月号 [雑誌]



褒め言葉を効果的に使う


褒め言葉は、会話を弾ませる最高の潤滑油です。褒めることによって相手との距離が縮まり、気持ちの良いコミュニケーションを取ることができるのです。


「褒める」とは、「すごいですね」といった言葉を贈ることだけではありません。「あなたを認めています」と伝えるコミュニケーション全般が「褒めること」であると、私は定義しています。


ですから、名刺に書かれた肩書きを見ながら、「どのようなお仕事なのですか?」と、興味津々な表情で聞くのも褒めることになりますし、「へぇ、イメージコンサルタント!」と目を輝かせて相手を見るのも褒めの一種なのです。このように考えると、褒め方のバリエーションは非常に豊富であることがおわかりいただけるでしょう。


また、褒め方には「幅」だけでなく、さまざまな「深さ」があります。図表は「ニューロロジカルレベル」と呼ばれるもので、人のセルフイメージや人生に変化をもたらす仕組み。一番下の「環境」は人の容姿や家柄、地位などの表面的な事柄を示しますが、上にいくほど、本人の人間性に深く関わる要素よなります。このうちどこを褒めるかによって、相手の喜びの深さも変わります。


初対面の段階では深い部分まで知ることは不可能ですから、まずは「素敵なお名前ですね」などから始めるのが妥当。加えて、飲み物を渡してもらったら「ありがとうございます! ちょど喉が渇いていました」と行動を褒めることもできますし、名刺に取得資格が記してあれば「この資格って、難しんですよね」と、能力を称賛することもできます。このように、相手の心に響くポイントを心がけながら言葉を選びましょう。


さて、ここからさらに会話を広げるコツは、褒め方のバリエーションを多く持つことです。


たとえば、「Iメッセージ」という方法。「I(自分)」を主語にして褒めると、素直に受け止めてもらえ、効果が上がります。


「すごい資格をお持ちですね」と評価を伝えるだけでは「いえいえい」と謙遜されてしまいがちですが、「この資格をお持ちなんて、尊敬します」と言えば、それはこちらの感じ方なので否定しようがありません。「ありがとうございます」とストレートに喜んでもらえて、会話も盛り上がりやすくなります。

  • 事実を言うだけで褒め言葉になる


「シーソー褒め」という伝え方もあります。自分を低く表現することで相手の良さを際立たせる方法です。たとえばプレゼンを終えた相手に、「私なら、緊張で足がすくんでしまいそうです」と言えば、相手の落ち着きを褒めたことになりますね。


この方法は、相手が目上である場合も便利です。上司や年長者に向かって「お話が上手ですね」と言うとかえって失礼な印象になりがちですが、「私はまだまだ、とてと部長のようには話せません」と言えば、自然な形で尊敬が伝わります。


あわせて、「質問系の褒め方」を上手に取り入れましょう。「○○さんの美肌の秘訣は何ですか?」など、教えを請う形で褒めるのです。人は質問されると答えようとしますから、必ず会話は続きます。相手も喜んで答えてくれるので、会話にも一気に弾みがつくでしょう。


このように、さまざまな方法を駆使して相手を褒めると、「嘘くさい印象を与えるのでは?」と考える人もいるかもしれません。


たしかに、思ってもいないことを言うなら嘘くさく見えるでしょう。褒め言葉は、必ず自分にとって真実でなくてはなりません。では万一、相手の褒めるところが見つからないときはどうすればいいでしょうか。その場合は、「事実を言う」という方法があります。