第1946冊目  THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 03月号 [雑誌]


  • 相手の当事者意識を喚起するテクニック


仕事をする中で「やりたいこと」を実現するためには、周囲の協力が不可欠です。この、目的を達成しやすくするためのアクションが「根回し」です。


根回しというと、「陰でこそこそ動く」「媚を売る」といったネガティブなイメージを抱かれることもあります。しかし媚になるかどうかは、目的をどう表明するかによって変わります。


「自分が出世したいから協力して欲しい」と頼むなら、確かに印象は良くないでしょう。しかし、「会社のため、世の中のためにこれを実現させたい」という利他的な目標を熱意とともに掲げれば、共感の源となります。


たとえ内心で出世欲を隠し持っていたとしても、利他的な目標も必ずあるはず。そちらを前面に出せば周囲から信頼され、一目置かれます。こうして味方を多くすることは、目標達成を格段に容易くするでしょう。


さて、実際に味方をつくるために動く場面では、自分のやりたいことを押しつけないよう気をつけましょう。必要なのは、相手を巻きこむアプローチです。


「『私が』やりたい」ではなく、「『私たち』で一緒にやろう」と語りかけるのが基本姿勢です。


ここで相手をその気にさせるには、「YESを三回言わせる」テクニックが効果的です。人は相手の言葉を三回肯定したら、そのあと反対意見を言いづらくなる、という心理的傾向を持っているからです。


一つ例を挙げましょう。


ベンチャースピリットは大事だよね」という一般論でまず一つYES。「わが社も守りに入ってはいけないね」でもう一つYES。「だから若いリーダーを積極的に登用したいんだ、そう思わない?」で、三段目のYES。


そうなると相手はもう、何であれ肯定したい心理になります。そこで「このプロジェクトは君のような若い人に任せたい。僕たちで一緒に頑張ろう」と言えば巻き込み完了です。


とは言っても、この調子でしょっちゅう周囲を巻きこんでいると、「仕事を増やされそう……」と警戒心を持たされる可能性も。それを防ぐには、日頃から密なコミュニケーションを取り、相手の話をよく聞く態度が大事です。「〜をどう思う?」など、質問系で語りかける習慣を持ちましょう。すると話が盛り上がり、相手も満足し、好感を抱いてもらえます。


また、直接仕事に結びつかないような雑談こそ大切。その際、必ず相手の性格や適正などを見極めるという目的を持つことです。たわいもない世間話でも、相手の価値観を知るには大いに役立つものです。


もちろん、仕事について語るときも同様。必ず相手の意見を聞き、その見解を確かめましょう。意見を言ってもらった時点で相手を当事者として加えることができますし、どう協力してもらえるかも見極められます。


さらに、相手の「属性」に言及することも効果的です。性別・出身地・得意分野などに触れながら、「君が必要だ」と強調しましょう。「あなたの女性らしい視点が新鮮だ」「君の営業出身ならではの見解が役立ちそう」などと伝えると、相手のやりがいにもつながります。