第1945冊目 THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 03月号 [雑誌]



新人の頃に教わったことを、当たり前にやる

  • 「評価のジリ貧」を防ぐ、守りの気配りを


気配りというと、「気の利いたことをして人に好かれる」というイメージを抱く方が多いでしょう。しかし、実はそれだけではありません。


気配りには二つの種類があって、一つはいま述べたような「攻め」の気配り、もう一つは嫌われないための「守り」の気配りです。このうち、より重要なのは守りのほうなのです。


なぜなら、人からの評価とは何もせずにいると少しずつ下がる「下りのエスカレーター」のようなものだからです。気配りなしに漠然と過ごしていると、いつしか相手に「感じの良くない人」と思われてしまうのです。


しかし、守りの気配りをコツコツ続けて信頼が一定値まで達すれば、今度は「上りのエレベーター」に乗り換えることができます。「感じのいい人」というイメージが定着すると、ちょっとした言動を肯定的に受け取ってもらえ、評価がぐんと上がるのです。


ですから、毎日職場で同じメンバーと顔を合わせるビジネスマンは、まずは守りの気配りを着実に重ねていくよう心がけたいところです。


では、具体的に何をすればよいでしょうか。第一歩はやはりあいさつです。近い関係の同僚にあいさつするのは当然ですが、「顔だけ知っている別のフロアの人」などつながりの薄い人にもあいさつは必要です。相手にしてみれば、なんとなく知っている人が丁寧にあいさつをしてきたら、嬉しく思うに違いないからです。


このように主語を相手に当てはめ、相手が嬉しく感じるかどうかを想像すれば、気配りのポイントは自然に見えてきます。


エレベーターのボタン操作をするのもその一つです。乗り降りする人のために「閉」ボタンを押して「どうぞ」とひと言添えるのは感じの良いものですね。出社・退社時間は重なるものなので、毎日続けると「あの人はいつもボタンを押してくれる」という印象を周囲に刷り込んでいくことができます。


エレベーターのみならず、皆が共同で使うものはすべて、気配りを見せやすいアイテムです。コピー用紙がなくなりかえたら足しておく、社用車で長距離を走ったらガソリンを補充するなど、あとで使う人の快適さにつながることをこまめに行いましょう。


大切なのは、あいさつを含め、新人社員の頃に先輩に教えてもらったことを当たり前のようにやること。長年、会社員をしているといつの間にか自分ルールができがちですが、最初に教えてもらったことをもう一度よく思い出して初心に戻ってみてください。

  • ほめ・叱り・反論……言葉選びが分かれ道に


言葉の使い方も、少しの違いで印象が大きく変わるものです。同じ「ほめる」ひと言でも、言い方に気を配れば高い効果を発揮します。


ここで抑えておきたいポイントは三つあります。


一つは、上から目線にならないこと。たとえ部下に対してでも、「上手だねえ」では、まるで子供扱いしているような印象になり、場合によっては逆効果に。対して、「俺のときよりすごいな!」などと自分を少し低めながら言うと、尊敬・感嘆がストレートに伝わります。


二つ目は、具体性を持たせること。「よくやった!」だけでは、何が良いのか相手に伝わりません。「三割アップとはすごい!」と数字を出せば、インパクトが強まります。


三つ目は、第三者を出しつつほめるよう意識すること。「部長も君をほめていたよ」など、他の人の意見も交えると、説得力がぐっと上がります。


「お世辞に聞こえないか?」と考えてほめ言葉を出し渋ってしまう人は、感謝に絡める方法を取りましょう。「さっきの件、代わりに対応してくれて助かったよ、ありがとう」と、事実は「ありがとう」を絡めればお世辞には聞こえません。


一方進んで、ほめる機会を作るために頼みごとをするのも手です。資料作成などを頼んでおき、できたら礼を言う。相手が嬉しくなってきたところに、さらに別の頼み事をする……というスパイラルもつくれます。これは「頼み方」におけるお勧めの方法とも言えますね。


また、部下に対する頼み方は、伝え方に気をつけましょう。つい「〜をやっといて」など、口頭で大雑把に伝えてしまってはいないでしょうか。上司に対してなら、きちんと書面に書き起こして依頼しているはずです。部下に対しても、「書いたももの」を用意して丁寧に頼みましょう。


さて、言いたくないことを言わなくてはならない場面も職場には多々あるものです。ここでも言葉選び一つで、好感を持たれるか否かが変わります。


まず、叱るときのコツは質問をすることです。「売上げが悪いじゃないか!」と責めるのではなく、「原因はどこにあると思う?」「アップするにはどうする?」と問い、相手の答えを引き出しましょう。これなら悪感情を持たれずにすぐだけでなく、解決にもつながりやすくなります。


上司に対して反論しなくてはいけないときも、相手を尊重する態度が肝要です。


「それは間違っています!」などと相手を否定するのは禁物。「そういう考え方もありますね」といったん相手を認め、その後自分の意見に移ると当たりが柔らかになります。


「社長はこうおっしゃっていましたが……大丈夫でしょうか」など、第三者の反対を匂わせるのも良い手です。相手の意見に賛成できないのは「自分」ではない、と印象づけられるうえ、相手の身の案じているニュアンスも出せるからです。


誘いや依頼を断るときも、やはり全否定は避けましょう。飲みに誘われたら「今日は都合がつきませんが三日後なら行けます」、仕事を頼まれたら「明日なら手が空くのですが」など、代替案を出しながら断るのが正解です。