第3347冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 自分にあった出世街道を見つける


地位や権力を手に入れようとするときに重要なのは、自分の適性や関心に合ったところで始めることである。仕事の中には、とりわけ多くの政治的スキルを必要とするものがある。たとえばプロジェクトマネジャーやプロダクトマネジャーは、その一つだ。協力を仰がなければならない部署や社員に対して人事や賞罰などの正規の権限を持たないのに、プロジェクトの達成という重大な責任を負う。経営幹部のアシスタントも、そうした仕事の一つと言えよう。人目につく存在であり、大勢の人の協力を得て仕事をこなさなければならないのに、たいした権限は持っていない。こういう仕事では影響力を巧みに使い、賢く水面下の交渉や根回しをする手腕が要求される。政治的スキルは身につけておくことが望ましいし、先ほど紹介したメアリーのように新しい自分を発見する人もいる。だがそうは言っても、がらりと自分を変えるのはむずかしいものだ。メアリーにしても、もともとリーダーシップ志向は持ち合わせていたのに、それまで発揮するチャンスがなかったか、意識的に避けていたのだと考えられる。だからまずは、興味があって向いていると思える環境に身を置くことが大切だ。そうすれば、仕事の技術的な面と政治的な面の両方で成功を収められるだろう。


そんなことは言われなくてもわかっている、と思われた読者が多いかもしれない。だがこの言わずもがなのアドバイスは、実際にはあまり守られていない。自分に適した場を見つけるには、いくつかのステップを踏む必要がある。第一に、自分を厳しく正直に見つめ、長所短所を見きわめ、自分は何が好きなのか。ほんとうは何をしたいのか、明確にしなければならない。しかしすでに述べたように、人間には自己高揚動機というものがあるから、自分を客観的に見られる人はなかなかいない。第二に、「みんながやっているから」とう理由で多数派と同じ行動をとるのはきっぱりとやめなければいけない。社会心理学の研究で明らかにされている通り、同調行動の圧力は強い。また、情報社会の影響力も同様の効果を持つ。「みんながやっているならきっといいことなのだ。何か合理的な理由があるにちがいない」という意識が働く。したがって人とちがう行動を取るのはそうした集団の知恵にさからうことになるので、強い抵抗を感じるわけである。そこで、みんなが株を買えば自分も株を買い、みんなが海外へ行けば自分も行く、ハイテク企業が人気なら自分もそこに就職する、といった現象が起きる。だがこのように無定見に同調行動をとっていたら、自分の道を見つけることはできない。