第3348冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 自分の身は自分で守る


数年前、ソフトウェア企業のCEOであるボブに頼まれて、私は社外取締役に就任した。おりしもその会社は新世代の製品に切り替えるところで、収益率はぐっと高まると期待されていた。私が社外取締役になってからほどなく、ボブはCFOとしてクリスを雇う。クリスはバリバリ仕事をこなす野心的なタイプで、大きな計画を心に秘めている様子だった――会社のためでなく、自分のためにも。そのクリスがCOOも兼任したいと言い出すと、ボブは承諾する。さらに取締役会に加わりたいという頼みも承諾した。次にどうなるかは見え見えだったから、私はボブに忠告した。「君はクリスに狙われていると」。だがボブの答は、会社のためになると判断したことをやるだけだ、というものだった。自分としては取締役会に根回しするとか、そういった汚い手を使うつもりはない、取締役会は自分の能力や人格をよくわかっているはずだから、正しい決定を下すだろう、という。


だが読者にはもう結末はおわかりだろう。そのとおり、ボブは更迭され、クリスがCEOになった。興味深いのは、取締役会が臨時に招集されたときの成り行きである。クリスの行動があまりにあからさまで会社のためにならないと考える取締役は多かったものの、ボブを擁護する人はほとんどいなかったのである。本人に闘う気がないのに、誰が援護射撃をするだろうか。自らの首を危うくするような人間は、同情も共感も得られない。


こうしたわけだから、自分の身は自分で守らなければならない。ときには、身勝手に見える行動もとらざるをえないだろう。たとえばある非営利組織で働いていた女性は、同僚に遠慮するあまり、千載一遇のチャンスを逃してしまった。