第3348冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 小さなことに気を配る


本書で取り上げてきたのは、意外に小さなことが多い。企業がときに壮大な戦略を打ち出す一方で実行面の細部を見落としてしまうように、個人も自分でできる小さなことをおろそかにしがちである。だがそうした小さなことが、重要なリソースへのアクセスを左右したり、あなたを大勢の中で際立たせたり、貴重な人脈を作るきかっけとなったりする。小さなことを見逃さない人は、着実に影響力を伸ばしていくことができる。


たとえば、大手コンサルティング会社に就職したマットがそうだ。マットは、最初は誰もがそうであるように、優秀な学業成績を収めて入ってくる新人の一人に過ぎなかった。この中から一歩抜けだし、すこしでも評価を得るにはどうしたらいいだろうか。入社当時には、さまざまな新人研修が用意されているのが一般的である。だが実際には、先輩コンサルタントは若手の人品骨柄を知り、力量や適性を推し量り、自分のプロジェクトには誰がふさわしいかを知る機会を欲しがっている。一方新人は、どんな先輩がいてどんなプロジェクトを担当しているのかを知りたい。先輩と新人が触れ合う場としては食事やセミナーなどがあるが、あくまでインフォーマルなもので、偶然に左右されやすい。マットはマネジング・パートナーのところへ行き、全員がお互いに知り合えるようなプロセスを組織的に作りたいと申し出た。そうすればプロジェクトの割り振りもやりやすいし、新人もうまく会社にとけ込めるだろう……。この申し出は快諾される。そこでマットは先輩全員にインタビューし、職歴や現在の興味、担当プロジェクトのリストを作成する。同時に新人にもインタビューし、専攻や特技、関心のあるプロジェクトを聞き出した。こうして、先輩と新人の双方にとって興味深い成果がまとめられ、公開される。しかもこの間にマットは大勢の人についてくわしく知り、社内に広い人脈を築くことができた。


この成果だけで、マットがパートナーに昇格できるとまでは言えない。だがすでに一目置かれ評価を得ているのだから、今後熱心に働き業績を上げることができれば、格段に有利であるとは言えるだろう。一度築いた人脈はその後の努力によって一段と強化できるから、それもまた影響力の拡大に貢献するはずだ。