第1184冊目  ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫 [文庫]G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)


ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫


友情は事業にどんなかかわりがあるのだろう? 考え方によっては大いにあるが、ほかの考え方をすれば、零以下だろう。友情が誰かを利用して「儲ける」ための手の込んだ方法を隠す見せかけでしかない場合も考えられるからである。君は実業界で、いろいろな人に出会うだろう。君の属する社会の代表的な断面に触れると言っていい。工場の従業員、販売先、仕入れ先、取引先、政府の役人。そのほかに仕事以外で会う人たちもいる。隣人、教会やクラブの会員、店員、自動車の修理工、それに私たちの場合、飛行機仲間や釣り仲間。ずいぶんたくさんの人たちである。そのすべてが君の親友になるわけではないが、みんなある程度は友達で、この地上で人と交わる喜びを与えてくれる。


サミュエル・ジョンソンはかつて言った。「新しく人と知り合いにならなかった日は、その日を失ったような気がする」。もっともな考えである。ほかにどこから友情が芽生えるだろう? 誰かに初めて会って、挨拶を交わし、会話から心が通うようになり、しばしば友情の促進剤になる「いつか昼食でもどうです?」で、交際が始まるのである。ついでながら、そのつもりがないのに、言葉だけの招待をしないように。行動を伴わないと、浅薄だと解釈される。