第1185冊目  ネゴ・スキル [単行本(ソフトカバー)] 三四郎 (著)


ネゴ・スキル

ネゴ・スキル


ミラーリングを知る


最後にミラーリングを伝えたい。


あなたはコーヒーショップで若い男女のカップルを眺める。ああ、いいな。そう思うだけなのだろうか。もう少し観察してみたい。小さなテーブルに向かい合った2人。女が足を組む。すると男も、やおら足を組む。男がコーヒーカップに手を出す。すると女も、コーヒーカップに手を出す。飲む。そして飲む。まるで鏡に映したように2人は真似をし合う。無意識だ。この同化作用を「ミラーリング」と呼んでいる。あまり嬉しくはないが、ミラーイングについてはサルも人間も同じらしい。


交渉相手を見る。相手がミラーリングを始めたら、それは打ち解けたしるし。あなたに好意をいだいたのだ。あなたへの信頼感が生まれ、あなたの提案をいただいたのだ。あなたへの信頼感が生まれ、あなたの提案を受け入れようとしている。そう解釈して間違いない。ということは、あなたが相手にミラーリングを仕掛けることもできるということだ。やってみる。すると相手は、あなたから好意と信頼を受け取るというわけだ。けれども注意が必要だ。ミラーリングを知っている人にこれを仕掛けると、相手を不愉快にさせてしまう。あなたが仕掛けられたらどうだろう。やっぱい不愉快だ。


実は、アメリカではセールスマンがこのミラーリングを使う。そして、消費者のほとんどがそのことを知ってしまった。今やセールスマンがミラーリングを使うとバカにされると聞いた。日本では、まだ、そこまではいっていない。ミラーリングを仕掛ける余地は充分にある。その効果は相当にある。


追加の話をもう1つ。


ミラーリングも奥が深い。人事の採用面接では、ミラーリングの効果は逆になるというのだ。アメリカでの実験なので日本人に当てはまるかどうかは分からないが、面接者が積極的な性格の場合、穏健な人物を好ましいと思い、穏健な面接者の場合、積極的な人物を好ましいと考えるらしい。これはどうしてなのだろうか。分からない。サルに訊くとしよう。