第1049冊目  采配 [単行本(ソフトカバー)]落合博満 (著)

采配

采配

欠点は、直すよりも武器にする


プロ野球界に飛び込んでくる若者は、他の選手より秀でた能力を何か必ず備えている。それがプロフェッショナルの世界だ。しかし、どんなに高く評価された選手でも、何から何まで完璧というわけではない。短所、欠点、弱点を必ずどこかに抱えているものだ。

ドラフトで指名されるような選手は、スカウトが視察する段階では長所ばかりが目立つ。普通のレベルの選手と一緒にプレーしていればいいところが目につくのは当然だし、スカウトには「欠点があるのは当たり前。それより、どんな長所を備えているか見抜こう」という視点があるからだ。

ところが、その選手が鳴り物入りで入団すると、「この選手があんなに高い評価を受けていたの?」と感じる監督やコーチは少なくない。

無理もない。毎日プロを指導していう目で「現時点ではまだアマチュア」の選手を見ているのだから、どんないいい素材でも欠点ばかりがすぐ目に留まる。似たようなことは、ビジネスの世界にもあるだろう。

新人を一人前にできるかどうか。また、どれくらいの時間を要するか。それは強いチームを作れるかどうかの分岐点と言える。スカウトが将来性のある新人を次々と連れてきても、現場が一人前にできなければチームは強くならない。反対に、現場が優秀でもスカウトの見る目が節穴では元も子もない。現場とスカウト部門が情報を共有し、同じビジョンを持ってチームを作っていくのが理想となるが、その中でも現場の長にある指導者は、欠点を長所に変える目を持って新人に接していくことが大切なのだ。