第1048冊目  “司法試験流” 勉強のセオリー (NHK出版新書 375) [新書]伊藤 真 (著)

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“司法試験流"勉強のセオリー (NHK出版新書)


適度な緊張なプラスになると思え


プレゼンが苦手だと感じる理由の一つに、緊張してしまう、ということもあるかと思います。確かに、大勢の人の前や初対面の人の前で話すのは、多かれ少なかれ勇気のいつものです。場馴れすることや、事前しっかりシュミレーションすることも、ある程度、当日の緊張を軽減することにつながりますが、まず認識しておきたいのは、そもそも緊張すること自体は悪いことではないということです。

なぜなら、緊張している状態というのは、自分が臨戦態勢に入った表れでもあるからです。当然、「どうでもいいや」と思っている人は、緊張しないわけです。「契約を取りたいから頑張る」という思いがあるからこそ緊張するのであって、真剣な場で緊張が生まれるというのは至極、当然のことです。それに、適度な緊張は、その場のひらめきや臨機応変な対応にもつながりますから、むしろ力になると思ったほうがいいでしょう。ですから、緊張している自分に対して、決して駄目だと思わず、「緊張してしめしめ」と思えばいい。よい意味でのストレスとして捉え、怖がらないことが大切です。

ただ、口が渇いたり、声が震えたり、汗をかいたりといった過度の緊張はほぐす必要があります。その場合は、ゆっくり深い呼吸をしてみるといいでしょう。医学的にも証明されていることですが、深呼吸は、副交感神経の働きによって気分を落ち着かせる効果があるのです。会議室でも、どこでも場所を選ばすにできるので手軽ですし、実際、これだけでも随分と違うはずです。

また、緊張している自分を意識して客観視してみると、意外と冷静になれるものです。例えば、頭の中で、客観的なもう一人の自分が「緊張するなんて、まだまだ未熟だな」と言い、それに対して「確かにそうだな。でも、せっかくのチャンスだから頑張るよ」と対話する。そうした工夫を試みることも有効なのだと思います。

それからもう一つ、認識しておくといいのは、プレゼンでどんなにうまく話せたとしても、どんなに優れた内容であったとしても、全員同じように一〇〇パーセント満足してもらうというのは極めて困難であるということです。つまり、緊張するというのは、「自分が話したことに関心を持ってもらえないんじゃないか」「うまく伝わらないんじゃないか」と思っている状態だと思いますら、そのときに、最初から全員を説得することは難しいだとうと心に留めておくんのです。ある程度割り切って臨むことによって、仮に本番で自分の話をまったく聞いてくれない人がいたとしても、「そういうものだ」と落ち着いて進行することができるでしょう。

加えて、人数が多いプレゼンでは必ず自分の話に頷いてくれる人や、よく聞いてくれる人がいるはずですがから、そうしたキーパーソンを見つけて、心の中ではその人だけを相手に話しているんだと思うことdえ、気持ちを落ち着かせて進行することができるはずです。

このようにして、言うなれば予習をしっかりして臨んだプレゼンの後には、しっかりと復習をすることも大切です。私は講演が終わった後、帰りの電車の中で必ず「一人反省会」をやります。「あのとき、ああ話せばよかったな」「あそこで時間をつめなかったから足りなくなっちゃったんだ」「あの聴衆だったら、もっとこれを話すばよかったな、次はこうしよう」と。勉強と一緒で、プレゼンもこうしたことを積み重ねることで、確実に力がついていくのだろうと思います。

ビジネスパーソンである皆さんにとって、プレゼンというのは日々の課題の一つであるはずです。しかし、プレゼン力は訓練さえすれば鍛えられるものなのです。ぜひ、この章でお伝えしてきた論理的に相手を説得するテクニックをマスターし、目標達成に少しでもお役立ていただければと思います。