第1050冊目  プロフェッショナルの条件 (はじめて読むドラッカー (自己実現編))P F ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)


時間を整理する


時間の使い方は、練習によって改善できる。だが、たえず努力をしないかぎり、仕事に流される。時間の記録の次に来る一歩は、体系的な時間の管理である。時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していくことである。そのためには、時間の使い方についての自己診断のために、いくつかの問いかけを自らに対して行っていく必要がある。

第一に、する必要のまったくない仕事、すなわり、いかなる成果も生まない完全な時間の浪費であるような仕事を見つけ、捨てなければならない。そのような浪費を見つけるには、時間の記録に出てくるすべての仕事について、「まったくしなかったならば、何が起こるか」を考えればよい。「何の起こらない」が答えであるならば、明らかに結論は、その仕事をただちにやめよということにある。

やめても問題のないことをいかに多くしているかは驚くほどである。楽しみでも、得意でもなく、しかも古代エジプトの洪水のように毎年耐え忍んでいる行事、スピーチ、夕食会、委員会、役員会が、山ほどある。ここでなすべきことは、自らの組織、自分自身、あるいは貢献すべきほかの組織に何ら貢献しない仕事に対しては、ノーということである。


毎食会食していた社長がそれらの会食を分析したところ、三分の一以上は、会社から誰も出席しなくても構わないことが分かった。遺憾ながら、招待のいくつかは、参席がそれほど歓迎されていないことさえ分かった。招待は礼儀にすぎなかった。欠席するものと思われており、参席することによって、かえって困惑を招いていた。


地位や仕事を問わず、時間を要する手紙や書類の四分の一は、くず籠に放り込んでも気づかれもしない。そうでない人にお目にかかったことがない。

第二に「他の人間でもやれることは何か」を考えなければならない。


毎食会食していた社長は、さらに三分の一はほかの幹部に任せられることを知った。山積者の名簿に会社の名前が出ていればよかった。

通常使われている意味での権限委譲は間違いであって、人を誤らせる。しかし、自らが行うべき仕事を委譲するのではなく、まさに自らが行う部kい仕事に取り組むために、人でできることを任せることは、成果をあげるうえで必要なことである。


第三に、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除しなければならない。これは、自らが他の人の時間を浪費しているケースである。巻単位分かる徴候はない。しかし発見のための簡単な方法はある。聞けばよい。「あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを、私は何かしているか」と定期的に聞けばよい。答えを恐れることなくこう質問できることが、成果をあげる者としての条件である。