第3786冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか

 

-健全なる危機意識をもつ人

 

 

福祉の職場で働くかぎり、リスクとは無縁ではない。好む好まざるかにかかわらず、必ず、リスクに向き合うことになる。

 

 

利用者が今、保持している力をこれからも失わないようにサポートするには、リスクとは向き合わなければならない。大切なのは、リスクに対する目配りを十分にしながら、保持する力を存分に発揮できるようサポートしていくことである。万が一、うまくいかないことがあったとしても、リスクへの対応が充分にさなれていれば、本人がケガをしたり、命の危険にさらされる事態は回避できる。リスクを踏まえた対応がなされていれば、再チャレンジに向けた取り組みにスムーズに移行できる。

 

 

しかし、リスクに適切に向かう姿勢を身につけるのは容易ではない。油断をすると、危ういと思うわえれることはすべて避ける「事なかれ主義」の罠に陥ってしまう。危ないから、何もさせない。危ないからチャンレンジなんとんでもない。そんな罠に陥ってしまうケースだ。

 

 

だからこそ、リーダー職員は強く意識しなければならない。健全たる危機意識をもち、事故防止に力を注ぐと同時に、利用者の成長や能力発揮に貢献できる職員の育成に努めていかなければならない。

 

 

危機意識を共有する職員集団を作りあげる際に、有効なのが「職場内ハザードマップ」作成の取り組みだ。各部署の職員に、部署ごとに、マップ作製を行うよう指示を出す。自分たちが働く職場のなかに、ハザード(著しい危険)をもたらすリスクはないか、個人ではなくチームで洗い出す作業に取り組んでもらうのだ。

 

 

「職場内ハザードマップ」を作る際には、次の三つの視点から、部署内(ユニット内)のリスクを洗い出す。

 

 

第一は、「場所」である。これまで、部署内で発生した事故や「ヒヤリ・ハット経験」をベースとして、危うい場所のリストアップ作業に取りかかる。例えば、特定の居室の前の廊下が滑りやすい、つま先が上がりにくい利用者はスリッパのつま先部分が引っかかって転倒しやすい、などといったリスクをリストアップしていく。

 

 

第二は、「時間」である。特定の危うい出来事が発生する時間をリストアップしていく。朝食の時間帯には何らかの事態が発生しやすい。昼食後の時間に何らかの問題が発生しやすい、といった時間軸からみたリスクの洗い出しだ。

 

 

第三は、「状況」である。どのような状況になると、危うい出来事が発生するか。何らかのトラブルが発生するか、ついてピックアップしていく。

 

 

それを、見える形で書き出していく。「場所」「時間」「状況」の三つの要素を考慮したリスクを一目でわかるように書き入れていく。

 

 

こうしたリスクを書き出せば、防止に向けた取り組みも、的を射たものが作成できる。リスクのイメージが明確なので、すぐに実践に移せる実効性の高い防止策が立案しやすくなる。