第3422冊目 90秒で好かれる技術 単行本(ソフトカバー) ニコラス・ブースマン (著), 中西 真雄美 (翻訳)

 

 

90秒で好かれる技術

90秒で好かれる技術

 

 

 

先日、私はナショナル・メディア・コーポレーションに赴き、会議室で数人の上級管理者を対象に一対一の集中コーチングを行った。製品担当副社長のテリーは、テーブルをはさんで私と向き合い、こう言った。

 

 

「人と信頼関係を築くためのセオリーはすべてわかっているつもりです。だけど実際にはうまくいかないんですよ」テリーはすかさず言い添えた。

 

 

「まわりの人間は私の話を聞いてくれますが、確固たる人間関係が築けないんです」

 

 

私には、この最初の数秒間のうちに、テリーの問題点、少なくともその大部分が、彼の様子から読みとれた。

 

 

テリーは会議用のテーブルに両肘をつき、祈りでも捧げるかのように両手を合わせ、話ながら唇を指先でトントンと叩いていた。彼は考えをめぐらせ。言葉を探すようにし視線をあちこち動かしながら、とぎれとぎれに声を出した。そのボディ・ランゲージから、いらだちやもどかしさが伝わってきた。私の身体がテリーの気分を感じとり、私も同じ気分になってきた。

 

 

彼はどんなときでも、「いらいらしている」というシグナルを人に送っているのだ。その結果、彼に意見を求めてくる人間は必ず「お時間はとれません」「すぐに終わりますので……」といったフレーズを言い添える。

 

 

そしておかしなことに、まわりの人々はテリーのいらついた態度を感じが悪いと受け取っているのに、テリー自身は熱意や活力を発揮しているつもりだったのだ。

 

 

テリーは自己一致ができていなかった。彼は交錯したメッセージを送っていたのだ。彼の人とつながる能力、前向きな気持ちから出たメッセージを送る能力は危ういもので、それとともに昇進のチャンスも危うくなっていた。