第3397冊目 超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール (知的生きかた文庫) 田口 佳史   (著)

 

 

 

 

-自分の能力を殺してしまうな

 

 

事を成すには、さまざまな能力が必要だ。しかし持っているだけでは足りない。それらの必須能力を縦横無尽に使いこなし、最大限の力を発揮できるだけの体力・気力に満ちていることが重要なのだ。

 

 

このくだいはふつう、リーダーシップ論として読まれます。

 

 

企業で言うなら、「最高責任者たる社長と、現場責任者とが一枚岩であれば、その会社は強い」として、さらには社長は信頼できる現場責任者を自分の右腕として、現場のことは現場を一番よく知っている責任者に権限委譲することの重要性を説いています。

 

 

具体的には、社長が現場責任者に余計な口出しをしてはダメだと言うんです。

 

 

たとえば現場責任者が「じっくり待て」と命じているときに、社長が「とにかく進め!」と横車を押す。逆に、現場責任者が「進め!」と命じたのに、社長が「いや、待て」と止める。あるいは社長が現場の実情を知りもしないで何かと干渉したり、現場責任者の頭越しに指揮をしたりする。

 

 

そんなふうでは組織が混乱して、内部から弱体化してしまいます。孫子はそのことに警鐘を鳴らしているわけです。

 

 

翻ってここでは、強い人間と能力の関係に置き換えて、読んでみましょう。

 

 

どんな仕事でも、他を圧するスペシャリストになるためにあ、必ず身につけていなければならない能力がいくつかあります。

 

 

たとえばマーケッターなら、市場動向をはじめ製品・価格・広告・販売・流通ルールなど、マーケティング全般について的確に調査する能力、それを計数分析する能力に加えて、ミクロ経済だけでなくマクロ経済を読む能力、さらに海外マーケットを対象とする場合はネイティブ並みの英語能力……実に多彩な能力が求められます。

 

 

しかし一つひとつの能力が完璧に磨かれていて、すべてが連関性をもって、現場で縦横無尽に実践されてなければなりません。

 

 

それが孫子の言う「周」。車輪のように、それぞれのスポークが独立して働きながら、一体となって強い推進力が発揮される、というイメージですね。

 

 

それだけの能力が完璧に備わっていれば、もう十分すぎるくらいに感じるかもしれませんが、孫子はまだ足りないとしています。あとは何が必要なのか。それは身に備わった能力をフルに発揮させる司令塔たる自分自身の体力と気力です。

 

 

せっかく十分な能力が備わっていても、体調が悪かったり、疲労困憊だったりすると、体のことばかり気になって、仕事どころではなくなります。元気はつらつの健康体でなければ、自分で自分の能力を殺してしまうことになるのです。また気が弱かったら、何をやるにもビクビク、オドオド。せっかくの能力も発揮できません。気力に満ちているからこそ、能力をどんどん押し出していけるというものです。

 

 

もっと言えば、「火事場のバカ力」ではないけれど、能力が多少劣っていても、気力さえあれば実力以上の力を出すことだって可能です。

 

 

ようするに、仕事で成功しようと思ったら、能力を磨くだけではなく、それを実践する行動力と、その行動力を促す体力・気力を持たなければいけない。でないと、せっかくの能力も「宝の持ち腐れ」になりかねない。そう孫子は説いているです。