第2470冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 集中力のカリスマ


ペイバルの共同創業者で現在はテスラー・モーターズのCEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスクは、集中力のカリスマのお手本だ。本人に訊けば、自分はとても内向的だと答えるだろう。テスラの開放的なオフィスで、マスクのデスクは右奥の隅にある。2台の大きなモニターが囲いのように配置され、周りから彼の姿は見えない(ほとんど席にいないのだが)。


しかし、モニターの後ろから現れるマスクは、プレゼンスと集中力をフルに発揮している。彼と向き合えば、彼が注意力を研ぎ澄まし、あなたの言葉にじっと耳を傾け、すべてを吸収しようとしているのを感じるだろう。彼が何も言わなくても、こちらを理解していることが伝わってくる。非言語のボディランゲージが、あなたの言葉を漏らさずに聞いて理解していると思わせるのだ。


集中力のカリスマは、主にプレゼンスを感じさせる能力にもとづいている。相手のそばについて、相手の言葉を聞き、すべてを吸収していると思わせる能力だ。集中力のカリスマがある人といると、自分の言葉を聞いてもらい、理解されていると感じる。このカリスマの威力を見くびってはいけない。驚くほど強力なのだ。


集中力のカリスマは、ビジネスでも大きな武器となる。ビル・ゲイツのそばで働いてきたあるエグゼクティブは、私に次のように語った


カリスマのある人は堂々としていて、圧倒的な個性で場を支配すると思われることも多い、でもビルは、地味な外見で、体格もたくましいわけではなく、典型的なオタクにみえるが、彼は確かに場を支配する。彼が姿を現せば、すぐにプレゼンスを感じる。その人が部屋に入ってくると全員の目が釘づけになるのがカリスマなら、ビルはカリスマだ。人を引き寄せ、自分の話を聞いてほしいと思わせるのがカリスマなら、やはりビルはカリスマだ。


元IBM社長のジャック・キーラーは、集中力のカリスマのもうひとつの重要な要件である、敬意を伝える能力がすば抜けていた。カリスマの基礎のひとつは、他人が自信を持てるようにすることだ。キーラーは、人々に自分の意見が尊重されていると感じさせ、自分は重要な存在なのだと思わせるコツを知っていた。彼は、最も若い社員も周囲と共有すべき知恵を持っていると心から信じていた。あるエグゼクティブは次のように語る。「キーターが工場の労働者やエンジニアのところに行くと、彼らをとても尊重して敬意を払っていることが見てとます。そして、彼のほうもキーラーを尊敬する。キーラーが来ると、エンジニアの顔がぱっと明るくなるんです」